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別話 北の特異性 (フェラリーデ視点)

「お待たせしました。」



「いいえ。それほどではありません。お早かったですね。」



「?そうでしょうか?」



 ビルム殿の答えに不思議な気分になります。

 クルビスが帰ってきてから話をしてましたから、時間がかかったと思うのですが…。



「ふふっ。ここにいるとあまりわからないかもしれませんね。

 こちらの設備は長の開発を取り入れているのでしょう?そのせいか、転移陣にしろ、装置類にしろ、他の…いいえ、このルシェモモのどこよりも設備が整っているんですよ。」



「そうかもしれません…。長が試作品をよく持っていらっしゃいますから、あまり気にしてませんでした。」



 ビルム殿の言葉に納得して、自分が気付いていなかったことに驚きながら向かいの席に座ります。

 ビルム殿の言われた通りです。ここの施設は「特別」なのだということを改めて思いだしました。



 この北地区は里から近いため、転移で動かせない大型の装置を運びこむことがよくあります。

 そのため、長がここの医療部隊長だったころ、何か試作しては北地区で試すというのが通例となっていました。



 それが現在でも残っており、「北地区で試してから他の施設で普及させる」というのが設備改良の図式になっているのです。



 さらに言えば、昨日活躍した簡易型の通信機のように、長が長老たちに内緒で開発したものを持ち込むこともあるので、北地区の転移陣は無駄なくスムーズに移動が出来るように常に改良されています。

 他の地区に比べればかなり早く移動出来ているのでしょうね。



 この事態が落ち着いたら、他の施設の転移陣と比較して普及させられる部分は改良していきましょう。

 頭の中で次の中央の会議で提案しようと決めて、ビルム殿に意識を戻します。



「試作品を…。それは長老たちには内緒ですね?」



 いけません。最近は長は開発を禁じられていたはずですから、今の言葉は不自然でした。

 慌ててビルム殿に言い訳しようとすると、手振りでそれを止められます。



「大丈夫ですよ。私は長の開発には賛成なんです。探究心の塊のような方ですから、禁じる方がかえって危険です。」



 苦笑しながらビルム殿が言われるのにホッとしつつ、まるで「危険なこと」があったかのような口ぶりに内心首を傾げます。

 ビルム殿は年長の同族の中でも長との付き合いの長い方です。助手のようなこともされていたそうですから、何か経験があるのかもしれませんね。お気の毒に。



「そう言っていただけると助かります。…危険なことがあったんですか?」



「―――ええ。まあ。」



 今の間は何でしょう?聞かない方が良かったのでしょうか?

 さらに突っ込んで聞こうとした時、長の魔素の増幅を感じました。



「「っっ。」」



 思わずビルム殿と顔を見合わせます。

 これは一体何事でしょう?治療にしては魔素が大きすぎます。



「…長はどこにおられますか?」



「…こちらです。」



 ビルム殿の問いかけに席を立って案内を申し出ます。

 これはもう、どんな言い訳をしても納得してもらえないでしょう。何をなさったのか、タイミングの悪い…。



 こうして、長を恨めしく思いつつ悟られることがないように、にこやかにビルム殿を医務室の奥の部屋まで案内することになったのです。







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