23.選んだ理由
「あ、あの…。クルビスさん?」
「うん?」
いえ、あの。展開早くないですか?
でも、お互い好きだったらこんなものかな?
(いきなりこういうのは初めて…。どうしよう…。)
そんなに恋愛経験ある方じゃないし、お互いがお互いを好きだってわかってる状況は初めてだ。
とりあえず、この状態をどうにかしたいけど…。
「えっと…。あの。ル、ルシン君もいますし、まだ昼間ですし…。」
「ルシンは寝てる。もう少ししたら長も戻られるし、それまでの間だ。」
だ~か~ら~。その間が恥ずかしいんですって。私が。
何だかどんどん恥ずかしくなってきて、クルビスさんの腕から抜け出そうともがく。
もぞもぞもぞ。
でもがっちり抱き込まれていてビクともしない。
「ハルカ?どうした?」
不思議そうにクルビスさんが聞いてくるけど、面白がってるのがよくわかる。
…声が笑ってますよ?私がジタバタしてるのを楽しんでるでしょう?
何だか悔しくなってきて、身体を動かして顔を合わせる。
すると、極上の笑顔が目に飛び込んできた。
(上機嫌…。え。そんなに?)
嬉しかったんですか?
こんなに好きだって全身で訴えてくるひとは初めてかも…。
(どこが…よかったんだろう…。)
クルビスさんの様子を見てるうちに疑問が出てくる。
だって昨日会ったばかりだし?
私の場合は、頼るものもない場所で出会って、助けてくれたひとっていう非日常な状況だったし、吊り橋的な効果もあったろうからまだわかるけど…。
クルビスさんは昨日1日で私のどこが好きになったんだろう。
「クルビスさん。」
「ん?」
あ、甘い。声が甘い~。
耳から溶けていきそうな錯覚に陥るけど、気力で踏ん張る。
「…クルビスさんは私のどこが良かったんですか?」
思い切って聞いてみる。
さっきメルバさんに「黒」のこともクルビスさんのことも聞いちゃったから、色が理由じゃないって確認したいのかもしれない。
「…最初は、色に驚いた。次に言葉が通じるようになって、リードの話についていけることに感心して。
魔素が響くことにまた驚いて…。気が付いたら目が離せなくなってた。」
色はきっかけなんですね。
私だから選んでくれた?
クルビスさんの答えにホッとして、肩から力が抜ける。
何だか暖かいものに包まれているみたい。
「…よかった。色だけじゃなかった。」
安心したら、一気に眠くなってきた。
うつらうつらし始める。
「…色?ハルカ。何のことだ?」
クルビスさんが何か言ってる。
でも遠くで言われてるみたいで良く聞こえない…。ねむ…い。