21.ドラゴンの睡眠
「ハルカ、悪いが治療はもう少し待ってくれ。その石があれば俺でも出来るが、今はマズい。」
さっきのお客様ですね?
寝てるって言っちゃいましたもんね。
「大丈夫です。もうほとんど治ってますし。」
特に辛いところもないんだよね。
気分も爽快だし。
「そうか。」
クルビスさんはホッとしたように微笑むと、手を伸ばしてきてそっと後れ毛を耳にかけてくれた。
…仕草がタラシっぽい。やっぱりモテるんじゃないかなぁ。
「どうかしたか?」
しかも無意識ですか。
自分がやったことわかってませんね?
(それとも、こっちではこれくらい普通なの?誰にでもやるのかな…。)
「…あっちで寝てるのはルシンか?」
私が内心の戸惑いと少しの嫉妬にどうしたものか悩んでいると、クルビスさんがルシン君のベッドを見ながら聞いてきた。
そういえばルシン君シーツに丸まって寝てるから、パッと見シーツの山にしか見えないんだよね。
「ええ。…あの、ドラゴンの子供ってああいう風に寝るんですか?」
「ああ。個立ちしても身体を丸めて寝るやつの方が多い。翼をしまってる部分を外に向けてる方が楽なんだそうだ。」
翼…。そっかドラゴンだもんね。
ヒト型になっても翼はあるんだ。
「成る程。それであんな風に丸まって寝てるんですね?」
「まあ、シーツに包まるのはルシンのクセだと思うが。…朝からなのか?」
あ、シーツの山はルシン君のクセなんですか。
個体差があるんだなぁ。
「私の治療を手伝ってくれたんです。それで疲れたらしくて、私が起きた時にはあの状態でした。それからメルバさんとお話してましたけど、ずっと寝ています。」
「ああ。それなら、もうしばらくは起きないだろう。
ドラゴンは1度眠るとなかなか起きない。長と話していても、起きるそぶりもなかっただろう?」
そういえば…。メルバさんとの会話を思い出す。
メルバさんと話してる間、ルシン君、寝返りも打たなかったんだよね。
「ええ。寝返りも身動ぎもしませんでした。…ドラゴンってそんなに寝起きが悪いんですか?」
「ふっ。ああ。そうだな。寝起きが悪い。母はいつも父を起こすのに苦労していた。」
クルビスさんが噴き出した…。
もっとクールなタイプかと思ってたけど、そうでもないのかな?
にしても、クルビスさんのお父様もドラゴンなんだっけ。
ドラゴンかぁ。ヒト型じゃなくて、本体にも会ってみたいなぁ。
「…ハルカはドラゴンが好きだな?」
「はい。憧れでしたから。お話の中でしか知らなかったんですけど、昨日飛んでる所を見た時は目が離せませんでした。」
思うままにクルビスさんに話す。
声が若干上ずっているのはご愛嬌です。