1.朝イチで女神
チチチチチッ
鳥の声が聞こえる。もう朝?
何時だろ…。目覚ましはまだ鳴ってないけど…。
ゴソッ
動こうとして身体に何かが絡まってるのがわかる。
え。何これ。
「毛布…?」
にしては薄い…。
うっすら目を開けると、そこには見慣れた白い壁紙はなく、漆喰のようなアイボリーの壁があった。
(っっ。どこっ。…ああ、そっか。)
驚いたのは一瞬で、異世界にいることを思い出すと落ち着いた。
驚いたおかげで一気に目が覚める。もう朝か。
何時寝たんだろう?
泣いてて、クルビスさんがお茶もって来てくれて、優しいこと言うからまた泣いて…。
(き、記憶が無い…。)
うわー。泣き疲れて寝ちゃったってことかな?
じゃあ、クルビスさんは?
薄暗いけど、室内は見渡せる。
でも、部屋を見渡しても私以外には誰もいなかった。
カッカッ
「っ。どなたさまですか?」
「…アニスと申します。リード隊長よりお世話を言いつかりました。」
誰か尋ねると、鈴のような声が返ってきた。
は~。かわいい声。っと、いけないいけない。
「ど、どうぞ。」
少しどもりながらも、何とか返事をするとドアが静かに開いた。
――女神さまだ。
「……。」
「おはようございます。今日からハルカさんの担当になります。アニスと申します。」
女神さま…もとい、アニスさんが優雅な仕草で挨拶してくれる。
私はといえば、口をポカーンと開けて見入っていた。
つやつやの黒髪をきれいになでつけている。一つにくくってるのかな?
でも、黒一色はいないって聞いたから、他の部分が黒じゃないんだろうな。
目は薄暗いからよくわかんないけど、顔立ちくらいはわかる。
切れ長の目、抜けるように白い肌、とがった耳…そして、この世のものとは思えない美貌。
見れば見るほど、現実離れしてる。
夢じゃないよね?…痛っ。太ももが痛いってことは、現実だ。
「…あの?何か?」
っは。いけない。他所様の顔をがん見しちゃった。
昨日も見てるんだけど、朝イチで見るのはまた違うっていうか…。破壊力があるっていうか…。
「い、いえ。何でもありません。里見遥加と申します。里見が家族名で遥加が名前です。どうぞ遥加と呼んで下さい。」
「はい。ハルカさんも私のことをアニスと呼んで下さいね。」
胸に手を当てて挨拶すると、アニスさんも微笑みながら返してくれた。
眩しい笑顔にHPがガシガシ削られてます。