13.寿命が増えた
「僕たちがこっちに来た時にね。同じことがあったんだ。」
メルバさんが静かに話し始める。
エルフの皆さんも…?
「ここでは、魔素の量と資質が皮膚の体色や髪の色になるって聞いた?」
「…はい。だから、私のような黒一色は珍しいって聞きました。」
そのせいでフード被ってお出かけしたんだもんね。
黒一色は私以外ではクルビスさんしかいないって聞いてる。
「うん。黒一色はクルビス君だけだったよ。それがまた問題でね…まあ、その話は後にして、僕たちがこっちに来た時の話に戻そうか。
こっちに来て、すぐにルー君…ルシェリードが来てね。『世界に選ばれし導く者よ。』って言ったもんだから、その場にいた僕以外は大騒ぎしてさ。
しょうがないから、その場にいた大人には事情を説明したんだけど、話してる途中で皆の魔力が変化してるのに気付いたんだ。」
そりゃ大騒ぎだったでしょうね。
メルバさんは世界に呼ばれてトリップしたけど、他のエルフたちにとったら寝耳に水だもん。
「魔力って魂の資質なんだけど、それは生まれ持ったものであって個体差が大きいものなんだ。特に僕たちエルフはそうでね。
それが、こっちに来てから誰も彼も極端に増えて…世界を渡る前の僕と同じくらいになってた。」
「…それは、メルバさんの魔力が大きかったということですか?」
「あ、そうだね。そこ説明しなきゃわかんないよね。ごめんごめん~。」
メルバさんが両手を合わせて顔の前に持ってきて、妙にかわいらしい感じで謝罪のポーズをとる。
…これもあー兄ちゃんの影響なのかな?それとも、元々のメルバさんのクセなのかな?
(聞きたいけど、今の雰囲気じゃ聞けないなぁ。また、あー兄ちゃんの話は改めて聞くかぁ。)
「僕はドラゴンとエルフのハーフでね。魔力も寿命も他の同族より何倍も大きいんだ。」
えっ。ドラゴンとエルフのハーフですかっ?
そんなの初めて聞いた。あるんだなぁ。
(『事実は小説より奇なり』かぁ…。ラノベでも聞いたことないなぁ。)
今まで読んだラノベのエルフを思い出してみる。
賢くて、綺麗で、神秘的で…。でもって、高慢で、美意識が高くて、閉鎖的で…話によっては純粋なエルフしか認めないなんてのもあった。
「ふふっ。驚いた?あーちゃんも驚いてたよ。僕の場合、見た目は完全にエルフだったから。
まあ、その分魔力と寿命が異常に大きくてね。ドラゴンの遺伝はそっちにいったみたい。」
あ、やっぱり珍しかったんですね?
エルフの見た目でドラゴンなみの魔力と寿命…最強じゃないですか。
「別にハーフだからって差別されたりしなかったんだけど、寿命が長い分成長が遅くってね。
どんどん大人になる友達に置いていかれるのがいやで冒険者になったんだ。世界を見ても、僕みたいな魔力持ちはいなかったよ。」
「メルバさんの魔力は規格外だったんですね?」
「そう。なのに、こっちに来て皆の魔力が異常に増えてた。世界を渡る前の僕と同じくらいに。
どうも、ここの世界に順応するために身体が勝手に魔素を取り込んだみたいでね。僕たちエルフはそういうの得意だから、みんな無意識にやってたんだ。」
無意識ってあたりがエルフっぽいなあ。
エルフっていえば、大抵、魔法使いかヒーラーだもんね。魔力操作はお手の物ですか。
「僕が驚いてると、ルー君が『もっと魔素を取り込まないと危ない。寿命が減るぞ』って教えてくれてね。
慌てて魔法で調べてみたら、里の全員が基礎魔力も寿命も10倍以上に増えてたんだよ。」
10倍以上…ってどれくらいになったんだろう?
エルフって、だいたいどの話でも200~300年くらい生きるよね?その10倍…。
「2000年…ですか…。」
「うん。ここでは魔力…魔素の強いものしか生きられないんだ。そのせいか、どの種族も長命でね。
僕たちで大体2000~3000年、他の一族でも短くても1500年くらいは生きるよ。ドラゴンに至っては10000年だ。」
いちま…頭がついていきません。
じゃあ、私も…?まさか、そんな…。
「後の研究でわかったんだけど、世界に順応すると魔素と寿命が増えるみたいでね。
ハルカちゃんも来た時の状態といい、今の魔素の量の多さといい、僕たちとよく似た状況なんだよね。だから、今のハルカちゃんなら、少なくても1000年以上は生きられるよ。」
「まさか」があった。
1000年…それがホントなら、私、とっくに元の世界には帰れなくなってますよね?