123.ヒヨコもどきの名前
「ぴ。ぶ。」
ん?衝撃の事実について聞こうとしたら、何だか変な音が聞こえる。
どこから?皆さんも不思議そうな顔で辺りを見ている。
「っ。ああ。起きたのか。」
そう言って、クルビスさんは我に返ると、腰にある革製のポシェットを腰から外してテーブルの上に置いた。お帰りなさい。
にしても、これって…ルシェリードさんからもらったヒヨコもどきの移動用のお家だ。
「ぷぎぃっ。」
ふたを取ると、ポンと黄色い塊が外に転がり出て来た。
…大きくなってる?ちょっとだけだけど。
「おはよう。良く寝れた?」
「ぴぎっ。ぷぎっ。」
何かを一生懸命訴えてるヒヨコもどき。
でも、何を言ってるのかは相変わらずさっぱりわからない。「良く寝た」って言ってるのかな?
「そういえば、このチビの名前いつ決めるんだ?プレート作るんなら、早い方がいいだろ?」
シードさんがヒナを指さしながら言う。
そういえば、名前を決めなきゃいけないんだっけ。
「そうだな…。ハルカ。このヒナの名前は俺たちでつけられる。何かいい名前はあるか?」
「えっと。今日のお昼に考えたんですけど、『ネロ』というのはどうでしょう?黒って意味なんですけど。」
「ぴぎっ。」
「…気に入ったらしい。俺も良い名前だと思う。このまま大きくなったら黒になりそうだしな。」
え。ホントにこれで決定なの?
いいの?単純極まりない名前なんだけど。
「あの。クルビスさんのつけたい名前とか…。」
「ブキィッ。」
私が止めようとするのを遮るように、ヒヨコもどきが強く鳴いてそっぽを向く。
…スゴい不機嫌そう。クルビスさんのつける名前は嫌なの?
「ハルカ。やめとけって。こいつ名づけがすげえ苦手だから。どうせ「くろ」とか「ちび」とかになるぜ。」
「シードっ。」
「ホントのことだろ?なあ。リード。」
「そうですね。」
シードさんからの突っ込みにクルビスさんが怒鳴って、フェラリーデさんは苦笑してる。
クルビスさん、ネーミングセンス無いんだ。私も似たり寄ったりなんだけど。
「ハルカ、気にしないでくれ。一応、俺も考えたんだが、気に入らなかったらしくてな。ふて腐れて、ポーチに潜り込んでしまったんだ。」
「ぴぎっ」
クルビスさんの説明に、当然だとばかりに鳴くヒヨコもどき。
全身全霊で訴えてくる姿に、クルビスさんの話が本当だとわかってしまう。
それなら、あの子がさっきまで寝てたのはふて寝ってことだ。
…クルビスさん、どんな名前つけたんだろう。すごく気になるんだけど。
ちなみに、クルビスさんがなんて名づけようとしたかは、シードさんがどんぴしゃで当てました(笑)