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120.兄の偉業

「こちらのハルカ嬢はあの『アタル殿』の妹君だという話です。」



「そうだよ~?あれ?メラちゃんあーちゃんのこと知ってたっけ?」



「里に知らぬ者はおりません。『異世界の救世主』の話ですから。」



 救世主?何そのラノベ展開。

 あー兄ちゃんってば、ホントに何したんだろう…。



「え?何かすごい呼ばれ方だね~?まあ、間違ってはいないけど~。」



 メルバさんの方が困惑顔だ。

 何だか認識に差があるみたい。



 たぶん、話が伝わるうちに大袈裟になってるんじゃないかなあ。

 あー兄ちゃん見てたら、『救世主』なんて似合わないってすぐにわかるし。ただの暴れん坊だもん。



「ハルカ嬢。我ら一族の話は聞いているだろうか?」



「は、はい。異世界から来たのと、ヒト族が嫌いな方がいるのは聞いてます。」



「それだけか…。長。お話ししてもよろしいか?彼女にも無関係ではない。」



「…いいよ。」



 メルバさんが返事をすると、部屋の空気がピリッとした気がする。

 緊張感が漂う中、私はメラさんと対面するように座りなおした。大事なお話はちゃんと向きあってしないとね。



「ハルカ嬢。我が一族は元いた異世界で、奴隷狩りにあったことがある。」



 いきなりヘビーな話がきた。

 でも、これでエルフのヒト嫌いに納得がいく。



 奴隷か…あり得る話だ。エルフは美しく利用価値が高い。

 最低だと思うけど、従える方法さえあれば、喉から手が出るほど欲しがる人間はいるだろう。



 エルフだけじゃなく、異種族の奴隷化はラノベやその他の多くの物語でも語られることがある話だ。

 でも、実際にその被害にあったエルフたちの話を聞くことになるなんて…背筋が寒くなってくる。



「そんな顔をしないでくれ。昔のことだ。だが、それだけでも貴女が我らの知るヒト族とは違うのだとよくわかる。アタル殿もそうだったらしい。

 里が襲われた時、旅先から長と共にかけつけて、あっという間に攫われた一族を奪い返し、二度と手出しできぬように強力な結界で里を覆って下さったと聞いている。

 その後は我が里に滞在されていたそうだが、その際、様々な技術を残された。それが現在の我が一族の技術の元になっている。我が一族はアタル殿には数え切れぬほどの恩があるんだ。」



 え。何そのチートくさい話。

 王道な異世界にトリップしたのは聞いてたけど、そんな無敵っぽい話知らないんだけど。



 その後、エルフの里にお世話になったっていうのもなあ…。

 それって、エルフ取り返す時に大暴れしたから、人間の住む場所にはいれなくなったってことじゃないの?



「そ、そうなんですか。」



 兄の偉業に頬が引きつるのがわかる。

 いや、良いことしたと思うよ?あー兄ちゃんすごいなって尊敬もした。



 でもね?それとは別に、話から見えるチートくささとか、人間と軋轢(あつれき)生んだっぽい感じの話とかがどうにも気になって仕方ない。

 ちらりとメルバさんを見ると速攻で目を逸らされた。やっぱり~っっ。



(あー兄ちゃん、チートかそれに近い状況だったんだ。それで異世界で暴れたのかあ…。止めれる人なんていなかっただろうなあ。)



 一緒に旅をしていたメルバさんには同情する。

 まあ、冒険の思い出を楽しそうに話してくれたし、わかってて一緒にいてくれたんじゃないかと思ってるけどね。



「それに、アタル殿は里に滞在された時に、幼い者たちの遊び相手でもあったらしくてな。ずいぶん時が経ったが、当時のことはみな覚えている。

 その者たちから下の世代にアタル殿の武勇は伝わっているんだ。『異世界の救世主』の物語として。」



 救世主の物語って…あー兄ちゃんが聞いたら喜びそう。

 まあ、奴隷から救って、技術も教えて、子供の面倒まで見てたんならそういう扱いにもなるか。



 でも、そうなると、ますますエルフの里にはいきたくないかも。

「救世主の妹」って、面倒なことになりそうな気がするし。

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