119.土産話
皆様、クリスマスはいかがでしたか?
私は辛うじてケーキは食べました( ̄▽ ̄)
皆で2階の医務室に着くと、フェラリーデさんとメルバさんが出迎えてくれた。
お仕事中にすみません。でも、重要な話があるんです。
「お帰り~。あ。話は奥で聞くよ~。こっち、こっち~。」
奥の部屋に移動しつつ、メルバさんが声をかけてくれる。
この独特の話し方、帰ってきたって感じだなあ。今日は移動が大変だったから、余計安心する。
「外はどうだった~?今日は数がすごかったでしょ~?」
「はい。すごい数で、身動きが出来ませんでした。でも、楽しかったですよ。珍しい物も多くて、買い物も沢山しちゃったし。あ。お土産もあるんですっ。」
奥の部屋に入ると、すでに人数分のイスとお茶が用意されていた。
お茶を見てお土産のことを思い出すと、忘れないうちにと、対面に座ったメルバさん、その右横に座ったフェラリーデさん、私の右隣りに座ったクルビスさんの順に渡していく。
ちなみに、私から左にメラさん、メルバさん、フェラリーデさん、アニスさん、シードさん、クルビスさんの順で座っている。
テーブルが楕円形だからか、クルビスさんが壁になって、シードさんやアニスさんの顔はよく見えない。
「お土産?わあ。ありがとう~。…ビビ茶だっ。いいのっ?」
「よろしいのですか?」
「…俺にも?」
メルバさんは嬉しそうに、フェラリーデさんとクルビスさんは意外そうな顔をして受け取ってくれた。
…そんなに驚きます?今の私じゃあ、このお三方以外に買うひといないんですけど。
「はい。お土産と言っても、今日行ったお店の報告と、同時に複数の買い物をする勉強を兼ねてますけど。ビビ茶なのは、飲んでみてとても美味しいお茶だったからです。」
メルバさんがお茶が好きだからっていう理由でお土産をお茶にしたけど、せっかくだからフェラリーデさんとクルビスさんにも買っていくことにしたんだよね。
自分の分と合わせて違う量の同じ品物を複数個注文するのは、中々難しかった。楽しかったけど。
「今日は、いろいろなお店に寄りました。服屋さんに行ってから、市場にも寄って、お昼の後ジジさんのお花屋さんも寄ったんですけど、最後はリビさんの茶店に行きました。そこでメラさんとお会いしたんです。」
皆さん、私の話に微笑ましげな目を向けている。初めてのおつかいみたいでいたたまれない。
クルビスさんの視線が特に甘い気がするのはスルーで。スルーでっ。
「そっか~。楽しんでくれたみたいで良かったよ~。お土産もありがとね~。ジジさんってことは…。」
「はい。名乗りをしていただきました。…メルバさん。お口添え下さったこと、お礼申し上げます。」
名乗りの部分でフェラリーデさんとクルビスさんがぎょっとしたのがわかる。
でも、先にお礼を言わなきゃ。私を気にかけて下さったことに感謝を。
「ジジさんのおしゃべり~。言わなくていいのに~。でも、上手くいったみたいでよかった~。」
メルバさんがホッとした顔で言う。
心配かけてたんだな。メルバさんにはどんな名乗りだったのかわかってるみたいだ。
「…ジジ様から名乗りを受けられたのですか。お疲れではありませんか?」
「いいえ。ルシェリードさんの時と同じで、少し緊張したくらいです。」
「同じ?では、ハルカ…。」
「正式な名乗りでした。そこでクルビスさんの傍にいると世界に宣言しました。」
にっこり笑って言うと、クルビスさんは口をカパッと開けて固まった。
あ。フェラリーデさんもだ。
「…そこまでしていたとは私も驚いた。ハルカ嬢、貴女は稀有な方だ。」
私の左隣にいたメラさんが嬉しそうに言う。
そうですか?私がクルビスさんの傍にいるってわがまま言った話だと思うんですけど。
何だか、周りの対応が思ってたのと違う。
メラさんには「勝手なことを」って怒られると思ってたし、クルビスさんはもう少し喜んでくれると思ってた。報告するのに勇気がいったんだけど。
あ。シードさん肩が震えてますよ?
クルビスさんの右に座ってても、震えてるのくらいわかるんですから。
「っ。…シード。」
「いやいや。俺かよっ。」
「肩が震えてましたよ。」
「いや。それはな?あれだ。お前らの驚きに共感してだな?」
我に返ったクルビスさん、シードさん、フェラリーデさんでじゃれ始めた。
仲良いんだなあ。前からやり取りが気安い感じはしてたけど、ただの同僚ってだけじゃないみたいだ。
「ふふふっ。まあ、じゃれ合いはそれくらいにしてくれるか?…長、お聞きしたいことがあります。」
「何~?」
メラさんが3人のじゃれ合いを軽くいなすと、メルバさんに話を切り出した。
いよいよだ。あー兄ちゃんが異世界で何してたのかがわかる。ごくっ。