117.意外な展開
「ここでしか買えない茶なんだ。北の方で作られるから、珍しくてね。少しだが、身体を温める作用もある。」
身体を温める?ますます紅茶みたい。
もしかして、探せばダージリンみたいなお茶もあるかな?
今度、リビさんに相談してみようか。
「…ハルカ嬢?」
「っ。はいっ。何でしょう?」
私が紅茶に意識を傾けていると、不意にメラさんが話しかけてきた。
びっくりした。まだ何かあるのかな?
「驚かせてすまない。お茶をずいぶん気に入ってくれたようだが、お好きなのかな?」
「はいっ。実家ではよく飲んでいました。」
「ご実家の?では、茶をたしなむ習慣がおありなのだな。」
「はい。母が好きなものですから、食事の時には必ず飲んでいました。そういえば、さっき、ジジさんの所でビビ茶をごちそうになったんですけど、知っているお茶に似ていて驚きました。」
「そうなのか。不思議なこともあるものだ。」
「はい。このクッキーというお茶も、味が兄が好んでいたお茶に似ていますし。とても不思議な気分です。」
「…兄君?ご兄弟がおられるのか?」
私がお茶について話していると、意外なところにメラさんが食いついた。
あれ?あー兄ちゃんの話って伝わってないのかな?
「ええ。兄と妹が1つずつ。…兄といっても従兄弟なんですけど、メルバさんともお友達だって…。」
「はっ?長と友達?兄君が?」
すごい偶然ですよね。って続けようとしたところで、メラさんから驚きの声が聞こえる。
え?何をそんなに驚いてるんだろう。ルシェリードさんから聞いてるよね?
「…ええ。兄も異世界に行ってしまったことがあって、そこでメルバさんと冒険者をしていたと聞いています。」
「それでは、ハルカ嬢の兄君とは『アタル殿』かっ。」
「は、はい。」
私の答えに呆然となっているメラさん。
どうしたんだろう。一体。
「…そうか。そうなのか。なら、一族に隠す必要などない。ハルカ嬢は我が一族の大恩ある方の妹君だ。今日の顔ぶれを見て外に出したのも納得していたが、そもそもその必要がない。」
メラさんは衝撃から立ち直ると、すぐさま姿勢を正して私に話し始めた。
メラさんの様子が変わったことに、私だけでなく、シードさんもアニスさんも姿勢を正す。
何だか意外な展開になってきた。
「隠す」って、エルフに対してってことだよね?「その必要がない」ってどういうことだろ。
(「大恩ある方」ってもしかしなくてもあー兄ちゃん?何やったのあー兄ちゃん…。)
エルフに恩を売るってどんなことしたらそうなるんだか。
しかも「一族にとって」ときた。
「なぜ長が隠されているのか理解できん。あなたは我が一族の守護を得られる立場におありだというのに。」
…どういうことでしょう?説明プリーズ。
うちの兄が何かやらかしてたみたいですが。