表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/137

12.冒険者な兄の話

「兄はずいぶん日本の話をしてたんですね。」



「ははっ。…っくっく。ごめんね。思い出しちゃって。っく。」



 筆記用具を見ながらしみじみとして言うと、メルバさんが可笑しそうに吹き出す。

 顔を軽く上に向けてるのが違和感あるけど、確か、こっちでは歯を見せて笑う時は上向くんだよね?



 こっちで1番最初に覚えた習慣だ。

 通常は口を閉じて微笑むだけなんだよね。



「…うん。いろいろ話したよ~。僕はエルフのこと、あーちゃんはニホンでの生活のことをねぇ。」



 思い出すと吹き出すって、何やったんだろ?

 あー兄ちゃんだからなぁ。ドラゴンの上で昼寝してましたって言われても納得すると思う。



「あーちゃんは突拍子もないことをよくやってたよ。ドラゴンと共同生活したりとかね~。

 向こうのドラゴンは気が荒いのに、朗らかに世間話してるんだもん。この目で見ても夢じゃないかと思ったよ~。

 最初に会ったときは、お互い冒険者だったんだけど…あ、冒険者ってわかる?」



 ドラゴンと共同…やってたんだ。この分だと昼寝もしてそう。

 それにしても、冒険者!ファンタジーな単語出てきたなぁ。



(エルフもいたわけだし、あー兄ちゃんの行った世界って王道な気がする。)



 そんなことを考えつつ、メルバさんの質問に答える。

 冒険者なら良く知ってますとも。ただ、冒険者も話によって立場が違ったからなぁ。



「はい。物語に出てくる冒険者なら、ですけど。」



「ああ、たぶん、その冒険者であってるよ。あーちゃんはその本からの知識のおかげで、飢え死にだけはしなかったって言ってたしね~。」



 じゃあ、やっぱり王道なパターンだったんだなぁ。

 良く無事に帰れたよ。いろいろ危険だったんじゃないかな。



「あの、じゃあ、モンスターとか魔物とかも…。」



「ああ。魔物は出たよ~。それを退治して、ついでに使える部位を取っていくのが冒険者。

 まあ、荒くれ者の仕事だね~。それで、ギルドって言う冒険者をまとめる組織があってね?そこの支部長に紹介されて出会ったんだ~。手ごわい魔物をチームを組んで討伐したんだよ~。」



 …王道だ。あー兄ちゃんすごいなぁ。

 どこでも生きていける人だって思ってたけど、ホントにどこでも生きていけたんだ。



「その依頼が終わって一旦は別れたんだけどね?旅の途中で偶然会って、そのまま一緒に旅をしたんだ。…そうだねぇ。10年くらいかな~?」



 え?今おかしい数字が聞こえた気が…。

 10年?別にあー兄ちゃん格段に老けたって感じでもなかったけど…。



「ああ、あーちゃんの姿のことかな?ニホンに戻るときに身体も戻ったんだよ~。魔法の副作用みたいなもんでね~。

 あーちゃん、『鍛えた筋肉が無くなってしまったっ。』ってすごく悔しがってた。」



 ああ、魔法の…。それで変わったところはなかったんだ。

 にしても、メルバさん良く覚えてるなぁ。それだけ、あー兄ちゃんがとんでもなかったってことなんだろうけど…。



 でも、よかった。あー兄ちゃん異世界で1人じゃなかったんだ。

 メルバさんが話してる感じだと、すごく親密な付き合いだったんだと思う。



「ふふ。目に浮かびます。兄は身体を鍛えるのが趣味みたいな人ですから。悔しかったんでしょうね。」



「もう、宥めるのがすっごく大変だったよ~。『帰るのよそうかな』なんてことまで言い出しちゃってさ~。

 まあ、その後すぐに僕たちはこっちに来ちゃったから、あの時帰れて良かったんだけど…。」



 あ、メルバさんが世界に呼ばれて…ってやつですか。

 確か、すっごく前に来たんですよね?



「あれから、2000年も経ったのになぁ。今でも昨日のことみたいに覚えてるよ。」



 あ、そう、2000年っ。

 実感が無さ過ぎて頭から飛んでた。



(…メルバさん若そうに見えるけど、2000歳過ぎてるんだよね?エルフだからなのかな?)



「ふふ。ハルカちゃんには、2000年なんて遠すぎてわかりにくいかな?」



「…実感がわきません。80歳くらいまでしか生きられませんから。」



「まあ、そうだろうね~。でも、これからはその感覚に慣れていこうね~?」



 え?その感覚って。

 …2000年っていう感覚?それともこの世界の感覚ってことですか?



「ハルカちゃんね。寿命が延びてるみたいなんだよね。」



 ワンモアプリーズ。

 今、おかしな話を聞いたような気がします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=279034186&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ