114.本題はこれから
長めの1800字程。
「そうなんですか?笑った感じがそっくりだなって思いました。」
「そうか。それは嬉しい。ありがとう。」
さわやかな笑顔がかっこいい…。またドキドキしてきた。
笑顔がクルビスさんと重なるから余計に。
これでもっと似てるっていうお父様に会ったらどうなるんだろう。
たしかお父様はドラゴンだったよね?わあ。ドキドキが止まらないかも。
コツコツッカコンッ
「失礼いたします。」
メラさんのカッコよさにドキドキしていると、軽い音がして壁の一部が内側に開いた。
…もう驚かないもん。こっちでは隠し扉や隠し部屋は普通なんだ。きっと。
扉が開くと、可愛らしい声で白猫さんが入ってくる。
白猫と言っても、手足と尻尾の先はチョコレート色だ。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
あ。そういえば、結局お茶を決めてない。
どうしよう。アニスさんに任せちゃおうかな?
「そうだな。ハルカ嬢。良ければ私と同じものでいかがだろうか?」
ハルカ嬢…。そんな呼び方、初めてされた。
でも、メラさんが言うと違和感がない。むしろドキドキ感がアップしました。
「はい。お願いします。」
「あ。じゃあ。俺もいいっすか?茶はあんま詳しくないんで。」
「それなら私も。メラさまのおすすめを飲んでみたいです。」
「そうか?ならクッキー4つだ。」
シードさんとアニスさんもそれに便乗して、メラさんがクッキーというお茶を4つ分頼んだ。
こっちの名前が私の知る名前とは意味が違うってわかってるけど、『クッキー』って…。
「どんなお茶なんですか?」
気になるから聞いておこう。
予想してた味と違う場合、噴き出す可能性があるし。
「薄い空色のお茶で少し甘い香りだ。味はさっぱりしている。」
さっぱりしてるんだ。香りが甘いのが気になるけど、味がさっぱりしてるなら大丈夫そう。
薄い空色ってことは薄いミントグリーンってことか。メルヘンだなあ。
「綺麗なお茶なんですね。楽しみです。」
「ふふっ。目でも楽しめる茶だ。それに、クルビスも好んでいる茶だから、味は保障するぞ?」
前半は私、後半はシードさんに向けてのセリフみたいだ。
シードさんは明らかにメラさんの話を聞いてホッとしている。
甘い香りって聞いたら、男性は好まないよね。
そっか。クルビスさんも好きなんだ。覚えておこう。
「…そういえば、クルビスの様子はどうだろうか?あいつめ、ここ最近は私の所にも夫の所にも顔を出さないんだ。」
メラさんが顔をしかめて言う。
…クルビスさん、実家に顔出してないんだ。まあ、私も盆と正月くらいにしか帰らなかったけど。
「よく働いてますよ。隊長殿の仕事っぷりには頭が下がります。」
「ええ。いつもお忙しそうにしていらっしゃいます。」
シードさんが苦笑し、アニスさんは慌てている。
…そうだよね。私から見ても、クルビスさんっていつもお仕事してるイメージだ。
「そうか。あいも変わらず働き詰めか。バカ息子め。」
ため息とともにメラさんが言う。
バカ息子って…。でも、言葉には怒りやとげが全然ない。
(心配なんだろうな。なかなか帰ってこないなら、なおさら。)
実家からの電話で母に小言を言われたことを思い出す。
「あんたは電話くらいしたらどうなの?」と呆れたように言われたっけ。
「北も忙しいのだろう?この間も中央に来てたのに、キィにひとこと言っただけで帰ったらしいしな。」
ああ。私がこっちに来た次の日。
そういえば、メルバさんが「早いね~。」って驚いてたなあ。
「あ~。すみません。俺、その時実家に帰ってたんで知らないんですよ。」
「たぶん、ハルカさんを心配なさってお早く戻られたんだと思います。ハルカさんはまだ魔素の扱いを習っておられませんでしたし、万一暴走したら、止められるのはクルビス隊長くらいだと、長さまがおっしゃっていました。」
シードさんが知らないと返事をすると、アニスさんがフォローのような状況説明をしてくれる。
そういえば、訓練の最初はクルビスさんもいてくれたんだよね。何かあったときに対処出来るようにって。
「ああそうか。成る程。長がおっしゃられるならそうだろう。」
アニスさんの話を聞いて頷くと、メラさんは私ににこりと笑う。
ひっ。何だか悪寒が…。
「…ハルカ嬢。あなたも黒一色だと聞いている。良ければ見せてもらえないだろうか?」
メラさんは笑ってるのに探るような目をしている。正直かなり怖い。
これが「聞きたかったこと」だと訴えてるみたいだ。
これが本題かな。感でわかる。
息子と同じ黒一色の女を見に来たんだ。