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107.青い花

「フォッフォッフォッ。シードもアニスも悪かったね。どれ、お茶を淹れ直そうか。お座り。」



 ジルベールさんに促されて、元いた席に着く。

 このお茶なんていうんだろう?買えるなら欲しいなあ。



「はああ。いきなりあれはキツイぜ。ジジ婆ちゃん。こっちにも心の準備っつうもんがいるんだっての。」



「ビックリしました。あれが正式な名乗りなんですね…。」



 カップを差し出しながら、シードさんもアニスさんもため息をつく。

 正式な名乗りは今では滅多にしないってクルビスさんも言ってたしなあ。驚いたよね。



「フォッフォッフォッ。すまなかったね。これも私の役目の内でね。」



 役目の内…。占い師としての?

 私が今日ここにくるのがわかっていたから?



 ジルベールさんならそんな気もするけど、不思議なのは変わらない。

 私が見つめてるのに気付くと、ジルベールさんは目を細めて笑った。



「今のハルカなら、ここに残る覚悟がある。だから世界にハルカが『いる』ということを宣誓することにしたのさ。」



 うん。クルビスさんの傍にいるって決めてた。

 だから、心のままに答えてた。



 ジルベールさんにはわかってたんだ。

 ドラゴンの占い師だからかな。ジルベールさんって、能力がすごいみたい。



「異界からわたって来た者は、世界に認識されねば、除外されることがある。

 ルシェリードから名乗りを受けた時は、こちらに受け入れる用意があると宣誓した。

 今、ハルカは自身の意志でここに残ると宣誓した。これでハルカは正式にこちらの世界の住民になったのさ。」



 そういう宣誓だったんだ。『私』が異世界から来たっていう確認みたいなものだと思ってた。

 正式な挨拶の場ではウソは言えないってクルビスさんに聞いたから。



 じゃあ、ルシェリードさんは先手を打ってくれたんだ。

 世界から『私』が除外されないように。



(ホント、いろいろ気を遣われてたんだなあ。何かお返ししたいけど、何が出来るかなあ。)



 だって、世界から除外されるって、元の世界に無事に帰れるってことじゃないもんね。

 どっちかというと、死亡フラグだ。



 こっちに来てから、何回死にかけてるんだろう…。

 何度も思ったけど、運を使い果たしたな。私。



「はあ。そういうことかよ。にしても…。」



「さあ。お茶が入ったよ。おあがり。」



 シードさんがなおも言い募ろうとしたけど、ジルベールさんはささっとお茶を淹れて私たちに配る。

 う~ん。これはシードさんの負けだ。



「わあ。いただきます。」



 ふう。良い香り。落ち着くなあ。

 驚くことばかりだったけど、考え過ぎても仕方ないよね。



 こっちに残るって決めたんだし。

 メルバさんにも言われたけど、ゆっくりやっていけばいいや。それがこっちのペースらしいし。



「…そういえば。ハルカは花を買いに来たんだろう?気に入ったのはあったかい?」



 あ。忘れてた。

 そういや、髪飾り見に来たんだっけ。



「そうですねえ。今日買った服に合う花ってあるかなって思ったんです。黄色い服で、着るのはもう少し先の予定なんですけど、花だけでも見ておきたいなって思って。」



「それなら、これがいいだろうね。」



 そう言ってジルベールさんが差し出してくれたのは、綺麗な青い花だった。

 中心は白っぽいんだけど、筒状の花びらは外側ほど濃い青になっている。



(これ…朝顔、だよね?)



 それは私が良く知った花だった。

 何でここに朝顔があるんだろう?



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