105.黒の効果
「ハルカは大物だよな…。」
シードさんがしみじみと言い、アニスさんも頷いている。
そう言われてもなあ。何も感じないし。怖くもないし。
「そうですか?」
私的には疑問で一杯だが、お二人にはそういう風に見えるらしい。
褒められてるんだよね?たぶん。
「フォッフォッフォッ。それで良い良い。
黒はあらゆる魔素の特質を持っているとされている。故に、他の者の魔素と拒絶が起きにくい。
お前さんが違和感を感じないのは黒の単色だからよ。」
え。黒ってそんな効果があるんですか?
訓練の時に似たようなことをメルバさんに言われたけど、そのおかげで拒絶が出ないのは初耳だ。
「黒ってそういう効果があるんですか…。」
「そこまで黒の効果があるのは、クルビスとお前さんくらいよ。
黒を一部しか持たぬ者は『他の者に術をかけやすい』というくらいの効果しかない。」
クルビスさんと私…。じゃあ、黒一色で初めて拒絶が出ないのか。
あ。もしかしてルシン君たちに治療出来たのも。
「あの。私、銀の子供の治療を手伝ったんです。私の魔素なら大丈夫だって。それも『黒の単色』だからですか?」
ここは確認しておかなきゃ。
さっきからアニスさんもシードさんも驚いた表情のままだから、一般には知られていない知識ということだ。
おそらく、フェラリーデさんも知らないだろう。今までの話に『黒は強い色』という話はあっても、『黒は拒絶が少ない』という話はなかった。
メルバさんは知ってるかもしれないけど、あのひとはこちらが知りたいことや知っておくべきことを明確にしないと答えてくれない。
あの独特の話しかたは、膨大な知識の流出を防ぐためにメルバさん自身がかけた制限のせいだとフェラリーデさんは言っていたけど、それじゃあ、私が知らないことは聞きようがないことになる。
だから、ここでしっかり聞いておきたい。
このおばあさんはすごく年長みたいだし、占い師ならいろいろな話を聞くこともあるんじゃないだろうか。
「そうよ。それも番でそろっていたから可能だったこと。」
番…夫婦のことだよね?
私とクルビスさんのことだと思うけど、何で知ってるんだろう?
「互いに傍にいることじゃ。それで救われるものも多い。」
何だか大げさな気もするけど、良いことが沢山あるってことだよね。
傍にいていいって言われたんだから、ここは喜んでいいところだ。
「はい。」
胸に手を当てて礼をしながら、良く知る黒い顔が頭に浮かぶ。
何だか会いたくなってきちゃった。
その頃の北の守備隊…。
「嫁はどこだ?バカ息子。」
「何でいるんですか…。」
「嫁の顔を見に来た。」
答えになってない。
親父の姿がないということは、勝手に出てきたな。
「プギッ?」
「っっ!」
ああ。そういえば、小さくてかわいいものに弱かったな。
よし。預かってもらおう。これで仕事に専念出来る。
「セパのヒナです。俺が預かることになったんですよ。俺の母だ。挨拶出来るか?。」
ヒナはわかってないだろうが、一応紹介する。
そういえば、こいつの名前を決めてなかったな。
ハルカが帰ってきたら相談するか。
だがその前に、この母をどうやって紹介すれば穏便に済むか考えなくては…はあ。