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103.花屋さん

今日も長めの1800字。

 *******************



「もう…お腹いっぱいです…。」



 自分の顔の半分もある揚げ肉まんを食べきって、何とか言葉を発する。

 こっちの食事ってボリュームが多い。取り分けてもらった量も、普通に1人前くらいあったし。



 今までの食事は私用に加減されてたんだなあ。

 でも、美味しかった。さすが名物料理。



 先に食べたステーキやパスタなんかも美味しかったけど、後から来た揚げ肉まんは皮がパンのように弾力があって、食べごたえがあった。

 中は牛肉っぽいひき肉と野菜のみじん切りを混ぜたもので、四角い皮の見た目はでっかいはんぺんだ。



 味は胡椒を利かせたシンプルなもので、飽きのこない味だった。

 揚げてあるのに、それほど脂っこくないのも高ポイントだったな。



「もういいのか?まあ、結構食ったよな。これなら昼過ぎも持つだろ。」



 シードさんは私とアニスさんが大方食べ終わったのを見て、大皿ごと手元に引き寄せる。

 そして、ひょいパクッと軽快に料理を口に運び始める。まだ入るんですね。



(クルビスさんもこれくらい食べるのかな…。)



 一緒に食事した時のことを思い出す。

 …私より多かったけど、ここまでの量じゃなかったはず。



「すごいですね。隊士の方って、皆さんこれくらい食べられるんですか?」



「いや?個体差があるぜ。俺なんかは隊士の中でも大食いだな。」



「ヘビの一族の方は皆さんよく食べられますよね。」



 ああ。シードさんがよく食べるんだ。納得。

 ヘビの一族は大食いなのかあ。役に立つかわからないけど、覚えておこう。



「ん。ごちそうさん。ここのはいつも美味いな。

 …まあ、大食いはうちの一族の特徴だな。親族が集まっての宴会だと会場の半分は食いもんだしな。」



 会場の半分…うわあ。用意するのも片付けるのも大変そう。

 一族の特徴かあ。トカゲの一族もあるのかな。クルビスさんに聞いてみよう。



「それはすごいですねえ。」



「じゃあ、リリィ副隊長が胸焼けがするってよくおっしゃるのも…。」



「ああ。あいつ、親父や叔父貴たちに勧められたもんを全部食うんだよ。付き合わなくていいのにな。」



 ひいいっ。その会場の半分を埋める食事に付き合うんですか。うわあ。

 でも、お養父様や叔父様方に勧められたら、断れないよねえ。ヘビの一族のお嫁さんって大変だあ。



「それは断りにくいでしょうね…。」



「ええ。今度、強めの消化剤を調合しときます。」



 私とアニスさんが何とも言えない表情で返すと、シードさんも仕方ないって感じで顎をかいていた。



「ま、そうなんだけどな。アニス。消化剤、早めに頼むぜ。近いうちに、また一族の食事に連れて行く予定なんだ。」



「了解しました。」



 シードさんが肩をすくめて言うのに、アニスさんが真面目に取り繕って答える。

 でも、二人とも目が笑ってるから、茶目っ気たっぷりに見える。



「で。この後は髪飾り見に行くんだったか?」



「ええ。ジジの花屋に連れて行こうと思ってます。」



 花屋さんかあ。今日は花を買う気はないけど、どんな花があるのかは見たいなあ。

 今日買った服と合うやつを見ておきたい。



「なら、そろそろ出るか。席も埋まってきたしな。」



 確かに店内は騒がしくなっていた。お客がどんどん入って来ている。

 さてと。それじゃあ移動しますか。








 *******************



「う。わあ。すごい数…。」



 歩くのもままならないほどの通行人だ。

 押しつぶされないように注意しながら進んでいく。



「っ。確かに。気を付けろよ。」



 真後ろでシードさんの声がする。

 振り替えれないけど、すぐ後ろにいるんだろう。



「手を、離さないで、下さい、ね。」



 人混みをかき分けながらアニスさんが進んでいく。

 私はそのすぐ後ろに並ぶようについて行ってる。



「こ、こです。」



 やっと人混みから抜け出すと、そこは一面の花畑だった。

 呼吸がすごく楽だ。ここが花屋さん?



 息を整えながら、改めて周囲を見渡すと、2mくらいの幅の通路が奥まで続いているようだった。

 床も壁も花で埋め尽くされている。真ん中にかろうじて1人通れる幅の道があるだけだ。



 天井からは綺麗な布が幾重にも重なって、とても幻想的だ。

 え?ここ花屋?



 お店の中をアニスさんに手を引かれて進んでいくけど、右に曲がった道が延々続いているだけだ。

 もちろん、通路は入口と同じように花で埋め尽くされていた。



 外の喧騒は、お店に一歩入った瞬間から聞こえなくなっている。

 まるで別世界だ。こころなしか、空気がひんやりとしている気がする。



 花に見とれながら進んでいると、不意にアニスさんが立ち止まった。

 アニスさんの前には木の扉がある。



(…今の今までなかったよね?これって、幻覚?)



 ここ本当に花屋さん?

 魔法使いや呪術師の家とかでなく?

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