94.次の行き先
「他にも何か作れそう…。」
わらびもちを食べながら観察してると、視線を感じて顔を上げる。
うん?アニスさんの目が輝いているような…。そして、シードさんが面白そうなお顔をしていらっしゃるような…。
「また、何か作られるんですか?」
「今度は俺もリリィもお相伴にあずかりたいねえ。」
あらやだ。口に出してた。
何でご存知…隊長さんが3人とも抜ければ、副隊長さんは当然知ってますよね。
「…口に出してましたか。ええ。次に作った時は是非味見して下さい。」
「わあっ。楽しみですっ。ワースから聞いたんですけど、その時本部にいなかったのが残念です。」
「やったな。アニス。俺も隊長さんから美味かったって聞いててよ。リードもそうだったって言うから、リリィがすげえ気にしてたんだ。」
ワース…っていうのは、たしかルシン君の別名だ。
そうか、アニスさんはルシン君に聞いたんだ。
シードさんも興味深々って感じだな。
クルビスさんもフェラリーデさんも何て言ったんだろう。
「リリィさんもですか。じゃあ、頑張らないと。…この後に行くお店ありますか?」
「この辺りだと服飾のお店は今の3つくらいで、あとは布だけで売ってるところがありますが、どうなさいますか?」
アニスさんに聞くと、今まで寄ったお店で服飾の店は全部らしい。
まあ、近場までって話だったし、良い買い物ができたから十分満足している。
となると、どこに行こうか。
フェラリーデさんには昼の2刻、つまり2時を過ぎてから戻るよう言われている。
守備隊を出たのが朝の8時だったから、今は9時半くらいかなあ。
こっちは朝が早いから、時間に余裕があるある。
「それじゃあ、髪飾りを扱うお店はありますか?頭の布とか、飾り物とか見たいんですけど、さっきまでのお店には無かったですよね。」
「ええ。髪飾りは花屋か小物専門の店で扱っていますから。そうですね。少し戻りますが、見に行きましょうか。」
花屋?髪飾りって花屋なんですか。
じゃあ、花飾りって生花なんだ。う~ん。それなら頭の布だけでいいかなあ。
「おっと。ハルカ。他にもないか?ハルカは決めるのが早いから、行きたい場所がもう2つ3つあってもいいと思うぜ。」
他に…あ、そうだ。食材みたいな。
何かわからなくても、お値段とか、スパイスにはどういうものがあるかとか、雰囲気だけでも知りたい。
1人暮らしするなら食材の調達は出来ないとね。
調理器具も見たいなあ。
「そうですね。食材をみたいですね。料理は見てますけど、元がどんな形なのか、値段がどれくらいなのか知っておきたいです。」
「へえ。花嫁修業ってやつかい?」
からかい口調でシードさんが聞いてくる。
花嫁修業って、気が早いですよ。クルビスさんにも食べてもらいたいとは思うけど。
「その前に、知らないものがたくさんあるので見ておきたいんです。名前が違っても知ってるものがあるかもしれませんし。」
「…まだまだか。先は長いねえ。なら、市場が先だな。10刻半にはあらかたしまっちまう。」
何故かため息をつきつつシードさんが行き先を決めてくれる。
10時半には市場が閉まるのか。早いなあ。なら、見たいものは決めとかないと。
「あ。じゃあ、果物と穀物、あと、このゼリーの材料とか香辛料とか調味料をみたいです。」
「お。なら、結構近いな。こっからすぐだ。これ食ったら行こうぜ。」
「はいっ。」
異世界の市場ってどんなのだろう。
わくわくするなあ。