93.ゼリーはわらびもち
「ゼリーですか。」
「ハルカは初めて食べるんだったか。」
「この辺りの名物なんですよ。海藻から作るんです。」
海藻から?それって何だか寒天みたいだ。
でも、寒天にしてはずいぶんプルプルしてるなあ。ま、食べてみればわかるか。
「はい。どうぞ。」
アニスさんが取り分けてくれたのを礼をして受け取る。
その際もプルプル震えていた。何かプリンを思い出すなあ。
小鉢に取り分けられたゼリーは透明に見えた。
少しだと不透明な感じはあまりしないんだな。味は?
「お好きなだけかけて下さいね。」
そう言って茶色い液の入った容器を勧められた。
かけるのかな?アニスさんにジェスチャーで尋ねると頷かれた。
あ。やっぱりかけるんだ。じゃあ、味はあんまりないんだな。
どんな味かわからないので控えめにかける。結構トロッとしてる。黒蜜みたいだ。
「それだけでいいのか?リリィもアニスももっとかけるぜ?」
「初めてなので、控えめにしときます。」
「ああ。そうだな。そのままのがいいってやつもいるし。」
シードさんに不思議そうに聞かれたけど、意識して控えめにしたというと納得してくれた。
私の場合、食べて大丈夫でも口に合わない場合もあるだろうから、気を付けないといけない。
黒蜜が全員にいきわたったので、胸に手をあてて食べる。
木のさじですくうと、思ったより抵抗感があった。ゼリーにしては弾力があるなあ。
口にいれると、冷たい食感とつるりとした歯触りが心地いい。
噛んだらもっちり感としっとり感が強調される。
僅かに甘みがあって、このままでも十分美味しい。
ちなみに、茶色い液体は黒蜜だった。風味がちょっと違うけど、黒蜜でいいや。
そんなに好きじゃないから、少しにしといてよかった。
これって、あれだよね。食感といい、食べ方といい、わらびもちだ。こっちのほうがクセがないけど。
ほうじ茶もそうだったけど、嬉しい発見だ。食べなれた味があるに越したことはない。
「美味しいです。食べやすいですね。」
「そうだろ。暑いときはこれが一番だ。なあ。アニス。」
「ええ。見た目も涼しいですし。」
あ。こっちでも見た目で涼を取るんだ。
じゃあ、和菓子はウケそうだな。
このわらびもちでくずもちっぽいの作れそうだし。
クセが無い分、黒蜜が勝ちすぎてイマイチな感じがするから、くずもちみたいにした方が美味しいんじゃないかなあ。
せっかく餡子を作ったんだし、次はくずもちに挑戦しようか。
ルドさんに相談してみよう。