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87.ポンカの店

「わあ。すごい…数ですね。」



「ハルカが来た時はほとんどいなかったもんな。ここは中央に繋がる表通りだからな。もっと多い時もあるぜ。」



 守備隊から出ると、通りのにぎやかさに目を奪われる。

 驚く私に、後ろからシードさんが説明をしてくれた。



 ホントはこんなににぎやかな通りだったんだ。

 初日に見た光景からは想像出来ないな。



「迷子になりそう…。」



 頭に浮かんだ心配を口に出すと、上から噴き出した音が聞こえた。

 ちらりと横を見上げると、やっぱりシードさんだった。顔が笑ってる。



「来たばっかのやつは皆そう言うな。1本道だから大丈夫だよ。俺もアニスもいるし。なあ?」



「はい。ちょっと数は多いですけど、はぐれなければ大丈夫です。」



 そう言ってアニスさんが握った手を振ってくれた。

 ちょっと照れくさいけど、はぐれるよりは良いからと繋いでもらってる。



「まずはポンカの店に行きましょう。」



 アニスさんの先導で人ごみをすり抜けて進んでいく。

 今日のアニスさん、ピンクのワンピースに黄緑のテラがとても良く似合ってる。2日目に私が借りたやつだ。



 私は昨日用意してもらった青のワンピースに白のテラ。

 シードさんも今日はラフな服装だ。黒の袖なしのシャツに黒のテラで麻のような素材の短パン姿。



 前に見た街の男性の服装だ。

 尻尾だけじゃなく、腕も足にもニシキヘビみたいな黒い模様が入っていたけど、それがまたカッコイイ。



「この店です。すぐ近くでしょう?」



 アニスさんが立ち止まったのは本当に守備隊からすぐだった。

 歩いて数分の距離だ。便利だなあ。



 結構大きい店だと思う。半球の建物の直径というか、入口が他の店より倍以上大きい。

 跳ね上げ式のドアの下も色とりどりの布が並べてあって、目移りする。



「ええ。近いですね。それに大きなお店ですねえ。」



「このあたりでは一番の服飾の店です。服はもちろんサーシャも髪飾りも置いてます。種類も大きさも揃っているので、ここにくれば大抵は揃えられますよ。」



 中に案内してもらいながら、アニスさんの説明に1番大きな店だったことを知る。

 どうりで大きいと思うわけだ。いろいろありそう。



「たくさんありますね。」



 薄いオーガンジーのような布、鮮やかな地色に黒で染め分けられた幾何学的な模様の布、形式的に図案化された花の模様の布…。

 様々な布で作られた服が店の壁を埋め尽くすように並んでいる。



 天井まで布で一杯だ。すごいなあ。

 あ。あれいいな。



「どうした?取って欲しいのがあったら言えよ?」



 シードさんが棒のようなものを持って声をかけてくれる。

 たぶん、あれで服をハンガーごと取るんだ。



「えっと。じゃあ、あそこの黄色に黒と銀の模様の服をお願いします。」



「ほいよ。」



 あっさりと取ってくれた。

 ありがとうございます。私だと棒を使っても届かなかっただろうな。



 私もアニスさんもこちらの女性と比べると小柄だ。

 シードさんは通りを歩いてた男性たちよりちょっと高いくらい。190センチくらいかな?



 胸に手を当てて服を受け取ると、抑えめの山吹色に黒と銀の花の文様が目に入った。

 一見派手に見えるけど、繊細な模様が上品だ。



「綺麗ですね。」



「似合うと思うぜ。」



 アニスさんとシードさんも褒めてくれたけど、自分で見れないからイマイチわからない。

 欲しいのは普段着とクルビスさんとのデートで着ていく服だ。これはデート用になるかな?



「こちらで見てみましょう。」



 アニスさんに手を引かれていくと、一枚の黒い板の前に来た。

 ぴかぴかした板だけど、アニスさんがふれるとハッキリ私の姿が映って驚いた。



「鏡っ?」



「ええ。魔素を流すと鏡になりますけど…伝えてませんでしたか?すみませんっ。」



 アニスさんの説明に医務室のトイレと自分の部屋の洗面所にあった黒い壁を思い出す。

 …もしかして、あれも鏡?今夜にでも確かめよう。



「いいえ。私も鏡の場所なんて聞きませんでしたし。気にしないで下さい。」



 うん。疑問に思ったら聞けば良かったんだよね。

 鏡がないと困るのは、考えたらわかりそうなものなのに。反省。

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