7. これってあり?(2)
(走れ!)
またしても命令されて、つい体が反応してしまった。
「ごめん、急用ができた! 先に行ってて!」
私は、淳子にそう叫ぶと同時に走り出していた。
淳子はと言うと、呆気に取られた感じで、走り去る私を呆然と見てる。当たり前だよね。
とにかく今は走るしかないんだ。
どうしてかは分からないけど。分かっているのは、走らないと怒鳴られるということだけ。
走り出しはしたけど、どこに行けばいいのか分からない。大体、怒鳴っているのが誰なのかもわからないんだから困る。
(あんた、誰よ!)
走りながら聞いてみた。すると、私の目の前に飛ぶように走る(?)黒い姿が見えた。
え?
これって、デス?
(そうだよ。とにかく急げ!)
忘れかけていた姿が目の前にいる。素敵な黒髪に、抜群のスタイル。
やっぱりカッコいいよな~。素敵だ~。
なんて思いながら走っていると、頭の中にデスの声が響いた。
(あのビルの屋上だ!)
目の前に立ちはだかるビルは、かなり高かった。
しかも、屋上には豆粒ほどの人の姿。
(エレベーターはどこ?)
(そんな暇はない! 階段で行け!)
そんな暇がないなら、逆にエレベーターでしょ!
と突っ込みを入れたいけど、なんだか突っ込んではいけない雰囲気。
言われるままに階段を目指し、一目散に上り始めた……。どういうわけか、二階だと思った場所は最上階。
(なにこれ? なんの魔法よ! てか、やたら便利なんだけど)
屋上のドアを開けると、青空が広がった。
(おお、スゲー。空だ!)
なんて、緊張感ゼロ。
(右側に進め! 向こうが大通り側だ!)
(そんなに怒鳴らないでよ。うるさいから)
いい加減怒鳴られるのにも飽きた。飽きたというより、できることなら冷静にクールに話して欲しい。そのほうが、デスらしいから。
まぁ、言われるままに進んであげたけど。
(彼女を止めるんだ)
怒鳴るのを止めたデスは、私の横に立って静かに言った。
でもね、止めろと言われても……。
やたらと風は強いし、スカートはパタパタとはためく。抑えながら歩かないとめくれちゃうじゃない。
それに、高いところは怖くはないけど、高すぎる。
彼女は私に気がついたらしく、怪訝そうな顔をしてる。
そりゃそうだよね。こんなところで会って、偶然ですねって挨拶するわけにもいかない。
さて……止めろって言うけど、どうしたらいいんだろう。