6. これってあり?
デスと会ってから4日が過ぎた。
かなり印象的だったはずの出会いなのに、記憶が薄れだしている。
薄情なのか?
い~や、そうじゃない。だって、この世のイケメンなら追いかけがいもなるけど、あれは人間じゃないわけだから。
ということで、私の中では忘れ去るべき存在になりつつある。
そんなことより、現実に彼氏が欲しいじゃない。
だから、友達に彼氏候補を紹介してもらおうってことで、今日はダブルデート。
これから相手に会いに行くわけだ。
「あずみさぁ。かなり力入ってるよね~」
と言ってきたのは、友達の淳子。
この子は、同級生なんだけど、彼氏にはことかかないタイプらしく、いつでも彼氏がいる。しかも、気がつけば新しい彼氏だからスゴイ。
「そりゃぁ、イケメンだったらゲットしたいじゃない。てかさ、淳子の紹介でハズレはなさそうだし」
かなり可愛い部類のブリッコ淳子だ。
紹介する相手もイケテルはずと思う。だからこそ、普段はしまいこんでいるスカートをはいてきたのだ。
とはいっても、淳子に比べるとかなり清楚(?)
「さぁ~。だって、私の彼氏よりイケメンだったら、それはそれでムカつくじゃない」
言えてる。
私でも、それは思うから文句は言えない。
「今日はね~。コーヒー飲んでぇ。ゲーセン行って、ぬいぐるみゲットしてもらうんだよ~。それから、カラオケ行こうね~。あ、カラオケのときは二部屋とるからさ~」
ヒラヒラとスカートをなびかせて淳子はいやらしい笑みを浮かべた。
大体、なぜにカラオケで二部屋とる必要があるのか不思議だ。一緒に騒いだほうが楽しいと思うんだけど。
でも、ここは一応話をあわせるために、ニッコリ笑って「だよね~」と言ってみた。
言ってみて思う。
(なにが、だよね~ なんだろう)
徐々にビルが増えてくる駅前通り。
車も多ければ、人も多い。
ビルは高いし、街路樹が申し訳程度に植えられている。
寒くもなく暑くもないから歩くのも苦にならないが、これで真夏だったり真冬だったら、こんなところまで来たくはない。
「結構遠いよね」
つい愚痴が出る。
基本待ち合わせは、近くでというのが私のモットーだからだ。
「そう? 遊ぶんだから駅の近くじゃないと、遊べないじゃない」
確かにそうだ。
うちの近くには何もない。何せ、住宅地だから、あるのは公園ぐらいなものだ。
「それに、どうせお金を出すのは向こうなんだし~。だったら、楽しく遊びたいじゃない」
可愛い顔して言うことがスゴイ。
そんな話をしながら、ブラブラと歩いていると、急に目の前の、ビルの屋上に立つ少女の姿が飛び込んできた。
飛び込んできたと言っても、顔を上に向けたわけじゃない。
なんでそんなものが見えたのか、自分でも不思議なんだけど、本当に急にそういう光景が見えたんだよね。
(なに? 今の……)
淳子はなにも見えてはいないらしくて、普通に歩いてる。
相変わらず、スカートの裾をヒラヒラさせながら。
(助けろ!)
少女の姿が見えたと思ったら、誰かがそう叫んだ。
でも、この場合(助けて!)なら分かる。なぜに、(助けろ!)って命令形?
(早く行け! 早くしないと、あの子は死んでしまうぞ!)
え?
どういうことよ?
てか、私はこれからデートなわけで……。
「ほら、あそこのコーヒーショップだよ」
淳子が指さしてる店は、コーヒー専門店。
(早くしろ!)
淳子とは逆に、声のほうはかなりの緊迫ムードだ。
私としては、人助けも大事だと思うけど、青春を謳歌すべきだと思うんだよね。
(バカヤロー! 今行かなかったら、彼女は死ぬんだぞ!)
え! ええ~!
そんなこと言われても、どうしたらいいのよ!