4. 死神デス(1)
帰宅してみると、やっぱりお母さんはうるさかった。
靴の脱ぎ方から、言葉遣い。弁当箱をだせの、部屋をかだせの。
とにかく、黙っていられないのかと聞きたくなるほどだ。もちろん、聞いたが最後大変な嵐を呼ぶので、誰も何も言わないけど。
私が帰宅したのと同時ぐらいに、真っ黒になった弟が帰ってきた。
弟はまだ中学生だけど、部活で忙しいらしい。何の部活なのかは、聞いたけど忘れた。
つまり、私は弟に興味がないのだ。
弟も私も自分の部屋に入るとほっとする。
これで、母親の小言を聞かなくてすむからだ。
「ホッとするのも分かる気がするよ」
部屋に入ると、誰もいないはずなのに、声が聞こえてきた。
私はビックリして、部屋の中を見回した。
すると、机に腰掛けている黒いイケメンに出会った。
(え? 何でいるの?)
確かにイケメンを見ているのは楽しいけど、自分の部屋まで押しかけて欲しくはない。
「さっきは、自殺できなくて申し訳ないと思って、謝りにきた」
いやいや、そんなことを謝られても、こちらとしても困るわけで……。
ていうか、私は言葉に出して言ってない!
と言うことは、考えを読まれているってこと?
「そういうこと」
またしても黒服の彼はニッコリ笑って、そう言った。
私はため息をついて、黒服の彼に言った。というか、思った。
(分かったから、出て行ってよ。ここは私の部屋なんだから)
「いいじゃない、居ても」
(いやよ! 着替えもできないじゃない)
「そうか、じゃぁ、しばらく消えてるよ」
(そういうことじゃなくて。面倒くさいなぁ)
こっちはテレパシーで話しているのに、相手は声を出しているのだ。
なぜに、テレパシーなんてもので話しているかと言うと、隣の弟に聞こえたらまずいからだ。それなのに、黒服の彼はまるで考えてくれない。
これ以上の面倒なことがあるだろうか。
(なんだ、そういうことか。最初に言えばいいのに)
今度はテレパシーになった。
(テレパシーねぇ。クックック)
なにがおかしいんだよ!
(まぁ、いわゆるテレパシーだよね。で、昼間は悪かったね。まさか、見えるなんて思わなかったから)
(私だって、死神が見えるなんて思わなかったわよ)
(でも、まだ若いんだからさ。死んでもつまらないよ)
死神に言われても説得力がない。
(白い死神は?)
私はベッドに座り込むと聞いてみた。
だって、昼間は白いのも一緒だったわけだし、ということは白と黒でペアなのかと思うじゃない。