3. 自殺志願(3)
私は手すりから身を乗り出して、下を見下ろした。
「よし! 今だ! 行け! 死ね!」
真面目に白は性格が悪い。
「あ~ぁ、やっぱり死んじゃうんだ~。若いのに、もったいないな~」
黒は落胆してる様子。
変なヤツらだな。
でも、こんなヤツらの思い通りにはなりたくないから、乗り出した体を元にもどした。
「何だよ、死ぬんじゃないのかよ」
白が思いっきり落胆してる。
「うるせぇよ!」
落胆してる白に、かなりムカついた私は、つい怒鳴ってしまった。
すると、二人が私を一斉に見た。
「え? 俺たちが見えるのか?」
「さっきから見えてるよ!」
私は手すりから手を離すと、二人のほうへ向き直った。
「俺たちが見えてるのか……おかしな人間だな」
「おかしいというよりも、あんたたちがヘマなんじゃないの!?」
本来見えないようにしなくちゃならないなら、それを見せてる自分たちが悪いので、私が変なわけじゃない。
「まぁ、見えてるならそれでもいいから。自殺するんでしょ、早く死ねよ。魂はもらっていくから」
イケメンだけど、許せない言いよう。
「死なないよ」
私はさっきまでの面倒くささを忘れて、死ぬのをやめると宣言していた。
「だって、さっきは死ぬって言ってたじゃないか」
白がかなり狼狽してる。
黒は嬉しそうだ。
黒が勝てるらしい状況を、私も喜んでる。
「まず、死ぬとは言ってない。(思ったけど)」
「死のうと思っていたから、身を乗り出していたんだろう!」
白がかなりムキになってる。
「でも、止めた」
「なんで!」
「死のうと思ってるときに、後ろで勝ったの負けたのって、人が自殺しようとしてるときに賭け事されたら、死ぬ気もうせるでしょ!」
そういうと、二人とも顔を見合わせてパッと消えてしまった。
おかげで、自殺願望は見事に消えて、単に授業をサボっただけになってしまった。
私は天を仰いで、おばあちゃんに聞いてみた。
「おばあちゃん、死ぬとき、どっちのイケメンが迎えにきたの?」
もちろん、答えはなかった。