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22. 望みを叶えて欲しいから頑張った(2)

「彼女は、この先素晴らしい人と出会って、可愛い子供の母となるべき人なのだ。それなのに、今くだらない男に捨てられて悲観している。その為に、自殺しようとしているのだ」


「あぁ、失恋しちゃったのか。死なせてあげれば?」



 デスが冷たい視線を私に投げてきた。



「死なせる気なら、お前を連れてはこない」



 分かってるわよ。そんなこと、重々承知。



「で? どうやって、自殺を思いとどまらせるわけ? 彼女は私の声が聞こえるの?」


「多分、聞こえないだろう」


「じゃ、どうやっても無理じゃない」


「それでも、助けたいという気持ちが大事だ」



 そんな、気持ちがあれば何でもできる的な……。青春ドラマじゃないから。


 てかさ、最近の青春ドラマでもそんなのないからね。



「とにかく、やってみろ」



 また始まったよ。とにかくやってみろ的な。


 しょうがないから、とりあえず彼女の部屋に入ってみた。前回みたいに、私の姿が見える力がないとは限らないから。もしかして、簡単に話が済んじゃうかも知れないしね。


 なんて、淡い期待を胸に部屋に入った。



「もしもし、もしもし。お邪魔してますよ~」



 と声を掛けたけど、やっぱり何も聞こえてないようだ。



 物を落してみたり、ペンで何か書いてみようかとも思ったけど。きっと怖がるだけだろうから、止めた。


 どうしようかなって考えてるときに、もしかしたら彼女の中に入れるんじゃないかということに気がついた。



「ちょっと失礼しますね~。あなたの中に入りますからね」



 肩に手を置いて、片足を突っ込んでみた。


 思ったとおり、自分の体に入るのと同じように入ることができた。


 さて、入ったのはいいけど、問題はこの先だよ。どうするか……。


 取りあえず、この大量の睡眠薬を捨ててしまおう、ということで瓶から全部出すと、トイレに流してしまった。


 もしかして、これのせいでトイレが詰まったりしても、私のせいじゃないということで、ジャーって勢いよく水を流した。


 瓶をもって部屋に戻ったけど、さてどうするか?



「後は、彼女の中から出ても大丈夫だ」



 なに?


 たったこれだけでいい訳?


 薬流して終り?


 それだけなら、何も私が来なくてもいいじゃない。



「……私は死神だ。お前がやったことと同じことを私がすれば、死神といて違反することになるのだ」



 指図してる段階で充分違反だと思うぞ。



「まぁ、1000歩下がって、そこは認めよう。でもさ、薬を捨てたくらいで自殺しようって気持ちが治まるわけ?」


「お前が体に入ったことで、彼女は自殺せずに意識を失ったことになる。見ての通り、彼女は気絶している」



 言われて彼女に目を向けると、確かに気絶中だ。



「薬は全部捨ててしまったわけだから、次の手段を考えるしかないだろう。だが、彼女は元々が死ぬべき人ではないのだから、目が覚めたときには、自分の愚かさに気がつくはずだ」


「ふ~ん。そんなものか」



 私とデスは彼女の部屋から外へと出て行った。



「とりあえず、一丁上がりって感じで、私の願いを叶えてくれるんだよね」


「あぁ、お前が望んでいることをしてやろう」


「はいはい、そう来なくちゃね~。何にしようかな~」


「付き合ってやろう」


「そう、付き合うってのも……え! 付き合う? 誰と?」


「お前はオレが好きなのだろう? どうだ、キスしてやろう」


「な!」



 さすがに、好きなのは当ってるし、抱かれたいなんて思わないこともないけど、こうも上から目線で言われたんじゃ、はっきり言ってプライドが許さない。


 いや、プライド云々よりも、それが報酬かよ!



「断る!」



 断るって言いながら、顔が真っ赤になってるのが分かる。


 しかもデスは楽しそうに笑ってるし、クヤシー!



「残念だな。せっかく、付き合ってやろうと思ったのに」



 と言う言葉を最後に、パッと消えてしまった。


 真面目に、本当に『死ねばいいのに!』と思った。


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