17. 夜の散歩(3)
「体から抜けてきたのか」
ちょっと詰まらなかったから、ムカつく野郎だけど返事してあげた。
「うん、幽体離脱術ができるようになったの。人間ながらすごいと思わない?」
「そうだな。スゴイ、スゴイ」
無表情アンド無感情で拍手してる。しかも、パチパチパチってやる気なさげ。
「やる気ないなら、無理に認めなくていいんですけどね」
「そのやり方を教えたのは、アイツか?」
「アイツってデス?」
「そうだ」
「やり方って程じゃないけど、ヒントをちょっとね」
本当にちょっとだけじゃない? それも、ヒントしか教えてくれなかったんだから、私は嘘はついてないよ。
「ふふん」
なんだろうね。シロが唇を歪まして、面白そうに笑った。
「何よ!」
「いや、別に。まぁ、頑張れよ」
何を頑張れというのだろう。
意味ありげで嫌な感じなんだけど。
「ここにいたのか。さっきのは、オレがもらったからな」
と言いながら現れたのは、言わずと知れたデスだ。
「構わないよ。今月は両手に余るほど集めたからね」
どうやら二人の言ってることを聞いていると、両手に余るのは魂の数らしく、『さっきの』というのは、ついさっき亡くなった人の魂らしい。
デスが『もらった』ということは、寿命の人間の魂なのだろう。
「デス、仕事してたんだぁ」
魂を集めることが仕事であるなんて、人間の私としては認めたくないけど、これは認めるしかない。見た目はイケメンでも、やっぱり死神なんだから……。
「あぁ、あずみ。本体からでて、こんなところを浮遊してるのか? 腕を上げたな」
「でしょ、でしょ~。我ながらすごいと思うんだよね」
「スゴイ・スゴイ」
また、シロのヤツが白けた声と、やる気のない拍手をしてきた。
私は、キッとシロを睨んだ。
「そうかぁ。こんなに上達が早いとは思わなかったな。うん、うん。すごいよ、あずみ」
デスのほうは、優しく暖かい微笑を浮かべている。
「オマエさぁ、コイツにこんなこと教えて、何を企んでるんだよ」
シロがデスに向かっていった。
「企むなんて、人聞きが悪いね」
「何も企んでないなら、教えるはずないだろ」
「教えたわけじゃないさ。ちょっとヒントを与えたらできただけだ。つまりは、あずみの能力ってことだ」
「能力ね~。どう見ても、無能なサルにしか見えないけどね」
ちょっ!
かなり失礼だよね!
無能なサルって!
「サルに失礼だろ」
そうそう、サルに失礼……じゃないだろう!