11. 幽体離脱(1)
気がついたら、空中に浮かんでた。
そして私は、病院のベッドの上だった。
あちこち包帯だらけで、酸素マスクをつけられて、ベッドの脇では電子音がなる機械が、ピコーンピコーンと波を描きなら、鳴り続けている。
どうやら一命はとりとめたらしい。
ベッドの脇には、看護師がいて何かを測ってる。
親は? 弟は?
まさか、家族は私が瀕死の状態(?)と言うことを知らないのだろうか……。
と思っていたら、ドドドドっと足音がして、病室に走りこんできた。
「あんたって子は!」
おお、鬼の目にも涙。
お母さんが泣いてる。
「自殺者を助けて自分が落ちるなんて、どこまで間抜けなの!」
人助けをした子どもに酷い言いようじゃないか?
お父さんも私を見て、辛そうだ。一番冷静なのは弟らしい。
さすが、私の弟だ。
「お父さんもお母さんも、冷静になりなよ。姉ちゃんは、一命どころか全く大丈夫だって、医者が言ってたじゃないか」
え?
そうなの?
あの高さから落ちて、全く心配ないってどういうことよ。私は不死身だったのか?
(そんなわけないだろ)
その声で、横に目を向けるとデスがいた。
(全く悪運が強いよな)
と言う声で反対側を見ればシロがいる。
もちろん二人とも、私同様浮かんでるわけだけど。
(悪運が強いってどういうことよ)
(ふん)
ふんって何よ!
シロのヤツ、面白くなさそうに鼻で笑うって失礼なヤツだ。
(落ちた瞬間にオレがバリヤーを張った)
デスが言うには、私が落ちた瞬間に、私の体にクッションになるようなバリヤーを張り巡らしたらしい。そのバリヤーのおかげと、ちょうど張り出したテントの上に落ちたのだ。しかも、そのテントがかなり厚手のものだったらしく、本来なら破けるはずのテントが破けずに、私はトランポリンさながらにバウンドして落ちた。更に、落ちた場所が植え込みの中だったというのだ。
こりゃぁ、確かに悪運が強いと思うわ。いや、強運の持ち主と言ったほうが正解かも。
(全く、自殺者は助けるし、お前は助かるし、オレの仕事をどうしてくれるんだよ)
シロがものすごく悔しそうにしてる。
でも、そんなの知らない。
(明子という少女もあずみも、まだ現世でやらねばならないことがある。それなのに、死んではならん)
デスが言うと、やたらと重みがあってカッコいい。
(そんなこと言ってるから、お前はダメなんだよ)
この二人は、どうして喧嘩ばかりしているのに、そばにいるのだろう。
(ところで、私って生きてるわけでしょ? それなのに、どうして浮いてるの?)
デスとシロがおかしそうに笑いを堪えている。
分からないから聞いてるのに、何なんだよ!
(いわゆる幽体離脱のようなものだ)
(へぇ~ これがカノ有名な、幽体離脱なんだ~。元気になったら友達に教えなくちゃ)
真面目にそう思ったんだけど、どうもこの発想が二人には理解できないらしい。