10. これってあり?(5)
「さぁ、友達になったんだからさ。こっちにおいでよ」
「本当に、友達になってくれるの?」
「もちろんだよ」
「だったら、あなたもこっちに来て」
一瞬、笑顔が凍った。
だって、明子が言う『こっち』とは手すりの外側だ。一歩を踏み外したら、飛び出してしまう世界なのだから。
「やっぱり、来れないわよね。友達なんて、嘘なんだ」
(そうそう、人間なんてそんなものさ)
シロが嬉しそうに笑ってる。
その状況をデスが冷静に、クールに見つめている。
『こっち』にいくか?
あずみよ、どうする!
自問自答の数秒。
私は手すりを乗り越えていた。
スカートが舞うが、気にしていたら落ちそうで怖い。ここは、気にせず乗り越えるしかないだろう。
「え? あずみさん……」
明子が驚いたように私を見ている。
「ね、だから、友達だっていったでしょ」
私は満面の笑みを浮かべて言った。でも、その笑みはパリパリに固まっていたと思うけど。
「うん。信じるわ。ありがとう」
「じゃ、死ぬのはやめるよね」
「ええ、死なない」
明子は自分から手すりを乗り越え、元の世界へと戻った。
それを確認して、私も手すりを乗り越えようと、足を掛けたときだった、思いもかけないような突風が私を襲った。
(なに? この風!)
バランスを失い、私の体は
―――飛んだ。
空がきれいに私を包みこむような錯覚に陥る。
これが、死への一歩なのだろうか。
あっという間に地面に激突するだろうと思っていたら、結構落ちるまでに時間がかかるもので、その間今までのことが走馬灯のように思い出されるとか聞くけど、私の場合は違ってた。
飛びながら思ったことは……
スカート履いてるんだよ。と言うことは、地面に激突したときには、スカートがめくれてパンツが見えちゃうじゃない。なんで、今日に限ってスカートなんてはいてきちゃったんだろう。
大体さぁ、なんで彼女の替わりに私が飛ぶわけ?
おかしいじゃない。この展開って。こんなのありなわけ?
あー、パンツ。もっと、可愛いのを履いてくればよかった……。
だった。
我ながら情けない。