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月の嗤う美しい夜。
部屋の隅にうずくまり震える少女は、何かを決意したような眼である一点を見据えた。
「力が欲しい」
鈴が鳴るような声で応えるのは――――金糸の髪が目映い天使。
「この力を貴女は正しく使えるか?」
「分からない。力があれば私は弱い自分から脱け出せるんじゃないかって、それだけ。」
「自己満足だね、そんなのは。貴女が後悔しているのは詮無いことだ。今、力があったって結果は何も変わりはしないんだよ。」
「……それでも。あの一歩を踏み出せなかった弱さは、いらないの」
絞り出したか細い、しかし切実な願いの篭もった声で少女は告げる。
「ふうん……分かったよ」
天使はうっすらとその薄氷色の眼を細めた。
「貴女は興味深いね。いいよ、この力を預けてみよう。
………契約成立だ」