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「…いるな」


低い声で呟くレン。それにつられて屋上の扉の窓ごしに一年ぐらい見ていない屋上の中をのぞく。

あいつか。

頭を扉側にして寝転がっている…女。どう見たって女だった。髪の毛が茶髪で長く、少し遠いけれど細く長い腕を交差させ、枕にしているのが見えた。春だけどもう半そでで、袖から見える白い腕。女、にしか見えない。

「…どうせ、鍵がかかってる。蹴破るぞ」

レンがそういうと同時に、俺はレンの近くにいたナギサを扉から離れさせ、自分の方に引き寄せた。カイトも半歩後ろへ下がる。

――――ダァァンッ

大きな音と灰色の煙が空気を半透明にする。蹴破る寸前にナギサの耳をふさいでいたが、やはりびくっとしたのか瞳をゆらゆらと揺らしていた。

その反応を見てゆさゆさと彼女の頭をなでる。すると、上目遣いでこちらを見てくるから…。

ほら、俺の心臓が大きく飛び跳ねる。

君はこんなにも俺を動揺させるんだ。


「何見つめあってラブコメやってんですか。さっさと行きますよ」

はぁ、とため息をつきあきれるカイトを横目に、俺は屋上の扉(もう壊されてるけど)を通る。見えたのは、大きく広く青く、世界を覆い尽くしている空。ふっと自然に細まる目。太陽がまぶしい。日差しが、熱い。

「…変です、ね。いませんよ?」

カイトの言葉で現状を理解する。

え、いない。いない?

いないって?さっきまでいたよな。じゃぁ、さっきの音で目覚めてどこかに…。


目の前に見えたのは太陽の光によって光っている細く長い糸。キランと光ったその糸を糸と確認する暇も、え、と理解する暇もなく。俺の首は悲鳴を上げた。


「―――っぐ!?」

苦しい。強い力に俺の首が痛い、苦しいと悲鳴をあげ続ける。うめく俺の声にいち早く気づくナギサ。「コウ君!?」という声が少しだけ遠くに聞こえる。

―――やばい、と直感的にそう思った。

「くそっ!」

あわてたカイトを見るのは久しぶりだな、と場違いな考えが頭をよぎる。レンの焦った顔を横目で見た。そして、俺はすべての状況を理解した。

首を絞められている、あの光る、細い糸で。

ドクドクと心臓の音。いや、血が流れる音が耳のすぐ近くでなっているような気がした。急いで両手で首に巻きついている糸を取ろうとするが、無理だった。――――強すぎる。指を入れる隙間もない。

キリリと音が耳の近くでなる。

――――次の瞬間、プチンとなる音によって俺は苦しみから逃れる。とたんに俺は崩れ落ち、床に手をつき息を整える。

「っく、はっ、はっ、はっ…くそっ…は…っ!」

過呼吸の一歩手前まで来る苦しさ。いや、もう過呼吸かもしれない。ちらりと周りを見ると、ナギサはガタガタと肩を震わせ、レンは眼を見開き「大丈夫かっ!?」と大声を張り上げる。カイトは、俺の首を絞めていた糸を切ったと思われるカッターを右手に焦るような顔をしていた。




――――「あははっ、こんな簡単なトラップに引っかかるなんてっ!この学校の天下も落ちぶれたものね!」


高らかに笑う声が俺らの頭上で聞こえた。



給水タンクのあるところの近くにニヤニヤして俺らを見ている女。

あの、寝転がっていたはずの茶髪の女。




この女を見た瞬間、ただものじゃないと思った。

必ず厄介になるやつだと。



俺の中の警戒心が渦を巻いていた。

修正をしました。

読みにくいかな、と思われるところを…。

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