お姫様とナイトたち
コウside
「なぁ、屋上に誰かいるみたいだぜ?」
少し不思議そうにしゃべる金髪で緑色の瞳をしている男、レン。もう、いかにも不良って感じがレンらしい。
「…え?それは妙、ですねぇ…。一年前から屋上には誰ひとりとしてはいれないのに・・・」
敬語で話す藍色の髪で眼鏡をした男、カイトがふむ、と考えるようにうつむく。きらりと窓からの光が眼鏡に反射をして俺がいるところからはカイトの目が見えない。確か、髪と同じように瞳は藍色だった気がするが。
「ってことはぁ、わかったっ!その屋上にいる人が屋上の鍵を盗んだ人だ!」
ニコニコと無邪気に笑いミルクティー色の髪を揺らす少女、ナギサ。彼女はレンの幼馴染で彼女が俺達の仲間になったのもレンが彼女を俺らに紹介したからだ。
――――俺達は、自分たちの容姿を十分にわかっていた。だからこそ、甘い言葉を囁いて振り向かない女はいなかった。少し、「あ、あの女いいかな」なんて思えば少し優しくしてやれば簡単に自分の中におさまる。そんなのが当たり前だった。それは、俺だけでなくレンもカイトも同じこと。きれいな女がいれば甘く囁き、優しく接する。そんな対話術は俺達の家柄がそう叩き込んだし、もとより容姿が十分すぎるほどだったから対話をしなくてもあっちから来ることはしょっちゅう。女なんてみんな同じようなものだ、とナギサが来る前までずっと思ってた。
――――ある日。俺達の目の前にニッコニッコと笑っている少女が現れたのだ。
ふわふわで色素の薄いミルクティー色の髪をゆらゆらと揺らして無邪気に笑ってレンと話す美少女。当時は彼女は転校した直後だったため、幼馴染であるレンとしか話していなかったらしい。何故女の友達ができないかというと、彼女が真っ先に向かったのがレンの場所で、レンのことを「レーン!」と大声で呼び捨てにいたかららしい。それ以来、彼女には女子生徒が近寄らなかったらしい。まぁ、そんなことがあって、2人を見つけた俺とカイトにレンがナギサを紹介してくれた。
『原田ナギサっていうの!よろしくね』
ニコニコと無垢のない笑顔で俺らと握手する彼女。その時、俺の心臓が大きく跳ね上がったのわけだ。
今まで、何人もの女を見てきた。が、ここまで無邪気に笑う女は初めてだ。
どの女もみんな、欲望という目をしていた。
ギラギラと音が鳴りそうなほど。強く、輝いている目だった。
しかし、ナギサだけは違う。ナギサは、無邪気に笑って、一緒に行動すると俺らの顔より性格を一つ一つ理解してくれて、あぁ、俺、ナギサに…と思うことがよくあった。
だから、彼女を仲間にすることに抵抗がなかった。
「あぁ、そうだな。いってみようか」
ポンポンととなりにいたナギサの頭をなでる。すると、少し頬を赤く染めて「子供扱いしないでよっ!」と言ったが、全然説得力などない。そんな可愛い顔されたら、もっとなでたくなってしまう。あぁもう俺、重症かもね。
「はいはい、イチャコラしないでください。さっさと行きましょう」
カイトがため息をつきながら階段を上がっていく。
ここは一階の昇降口。ついさっき一時間目の授業のチャイムが鳴ったところ。こんな不良校なんだから、ほとんどはさぼりだし、教室にいてもおしゃべりばかり。だから、俺達は自分たちのたまり場にいたり、学校を徘徊したりして暇をつぶしている。
…てか、一階から屋上まで行くのか…。面倒だな。
少し憂鬱になりそうな気がしたが、すぐやめた。
だって。
「どんな人が鍵盗んだんだろうなぁ…?女の子かなぁ…?あ、男の子?うーん・・・」
可愛い顔して真剣に悩んでるナギサを見たらなんとなくやる気が出てしまったのだから。
あぁ、もう。
そんな顔、誰にも見せたくない。全部俺のものにしてやりたい。
「おい、ナギサに見惚れる気持ちはわかるが、さっさと行こうぜ?」
ニヤニヤと笑うレンに俺は軽く睨みながら階段を上る。続いてナギサも上り始める。
――――さぁ、どんなやつかな。
小さな期待と不安と興奮が俺の中で奮闘していた。