7. 勝利
――ここはどこだ?体が鉛のように重い。私はベッドの上に横たわっている。傍らには古代の衣装に身を包んだ青年。私の手を掴んで泣いている。青年はエーヴェルトの墓所で見たイリスの肖像画に似ていた。
「エヴェリーナ、守ってやれなくてごめん。」
その言葉を聞いて、私の頬に一筋の涙が頬を伝った。ああ夢か。でもいつもの未来視ではなかった。遠い遠い昔の記憶のような夢。
「――今度こそ、守ってやるって言ったのに。守ってやれなくてごめん。」
リアスのかすれた声に現実に引き戻された。はっと気が付くと、簡易ベッドの上に横たわっていた。私の手をリアスがしっかり握りしめている。
「……起きたか。よかった。本当に良かった。体調はどうだ。」
「私たち、助かったんですね。」
「ああ、お前が呼び出した氷龍が俺たちを庇って、要塞の外まで連れ出してくれた。ただ爆発の威力が強すぎて、君は気を失ったようだ。痛いところはないか。」
「ええ。ちょっと頭がぼーっとするけど、大丈夫です。」
「すぐに医師に診てもらおう。」
リアスが連れてきた従軍医師の診察を受ける。
「少し魔力を使いすぎたようですが、怪我はないようです。回復を早めるために、こちらの魔力補給ポーションを飲んでおいて下さい。」
渡された魔力補給ポーションを、少しずつ飲む。
「無理が来たんだろう。ゆっくり休め。」
「ありがとう。」
「礼なら、お前の相棒、氷龍に言うんだな。」
「ふふ。そうね。そういえばマティアス殿下は?フィーラの兵たちは?」
「マティアスは要塞ごと吹っ飛ばして、自爆。周りの側近たちも即死だろう。フィーラの一般騎士たちは捕らえて、捕虜にした。交渉の材料に使うつもりだが、母国に戻しても反乱軍扱い。きっと処遇はひどいものだろうな。かわいそうに。」
「――マティアス殿下が最期に『好きだった』なんて言うから、驚いちゃった。どうしてああいう行動しか取れなかったのかしら。本来は賢い人のはずなのに。」
「アイツは残念な男だったな。最期まで。早く忘れろ。いや、忘れて欲しい。」
「――そうね。そういえば私、気を失っている間に変な夢を……。」
「また未来視か?」
「ううん。未来視じゃない。部屋も服装も古風だった。私がベッドで寝ていて、エーヴェルトの墓所にあったイリスに似た青年が私の手を握っているの。『エヴェリーナ、守ってやれなくてごめん』って言ってた。」
「そうか。――王都に帰ったら、あの墓所に関する歴史的な再評価も行おうと思う。過去の英雄は正しい形で評価されるべきだ。」
リアスは、少し遠い眼をして答えた。
「そうね。魔道具班の人たちも、歴史的発見だと喜んでたわ。あの部屋の結界が解き終わったら、すぐに記憶装置の解析を始めるんじゃないかしら。あそこに記録された記憶が全て明らかになれば、当時の色々なことが分かりそうね。」
「ああ。あいつらは優秀だ。きっとすぐに解析してくれるはずだ。」
そう言って、リアスがにっこり微笑んだ。




