5. 要塞
「部隊長、直接敵陣に乗り込もうと思うが、異議はないか?要塞の構造は大丈夫だ。この眼を使う。」
「ええ、もちろん。騎士たちは外側から、殿下は内側から。敵軍の残党を挟み撃ちにしましょう。」
リアスに促され、私も炎龍に跨る。私たちを乗せた炎龍が、宙に舞い上がった。フィーラの要塞を目指す。
「落ちないように、しっかり捕まっていろ。」
「分かってるわ。」
護衛のため、不死鳥も私たちの後を追う。火の粉を散らすその姿はやはり神々しい。上空からは、嫌でもフィーラの騎士服を着た無数の亡骸が目に入った。かつて味方だった者たちの死は、胸にこみ上げるものがあった。でも自分たちが間に合わなかったら、トヴォーの騎士たちがこうなっていたし、ボルタの遺跡にいた研究員たちが惨殺されていた可能性もある。闘わなければ、大切なものは守れない。
「下を見るな。君が殺したのではない。マティアス殿下が己の功名心のため、無謀な策に乗り、彼らは命を落としたのだ。」
リアスはじっと要塞を見つめたままそう言った。
「あのフィーラ側の要塞で、どこにマティアスがいる可能性が高い?」
リアスは、要塞を鑑定しているのだろう。眼が金色に輝いている。
「おそらく、二階奥の指令室かと。あそこは隠遁魔法と結界魔法が何重かにかけられていて一番安全ですから。」
「分かった。」
フィーラの要塞の屋上に、炎龍が降り立った。ここにも魔法騎士と思われる無数の死体が転がっていた。
「炎龍よ、あの扉を焼き払え。」
豪火が木製の扉を焼き払う。
「ランケア・アクアエ!――水の槍。」
リアスは水魔法が使えないから、燃やしたら燃やしっぱなしだ。自分たちが歩けるように消火を済ませた。建物の中に入るため、一旦、精霊召喚を解く。
「鑑定済みかと思いますが、この建物は地上四階建てです。上の方の部屋は騎士たちの宿舎になっています。早速二階へ向かいましょう。案内します。」
「ああ。頼む。」
石造りのらせん階段を駆け降りる。二階の扉を氷魔法で破壊する。
「こちらです。」
要塞の二階は作戦会議などにも使われる。敵陣に攻め入られた時のために、いくつかの魔法が仕込まれている。
「リアス、ここを右です。」
一見、見落としそうになる廊下を右に曲がる。隠遁魔法がかけられているこの廊下の奥が指令室だ。少し行くと、何人かの騎士が立っていた。殿下の護衛騎士だろう。
「お、お前たち何者だ!」
「フリゲ!――凍れ!」
氷で騎士たちの動きを封じる。そのまま指令室に向かって走っていく。行き止まりには、大きな鉄製の扉。
「ここが指令室です。」
リアスの目が金色に輝いている。
「――三重にかけられた結界。中は殿下一人と、護衛が四人。」
「では、まず結界を外しましょう。」
フィーラで使われている結界のパターンは、限られている。テキパキと、結界解除の魔法を解いていく。
「これで最後。」
パンっと音がして、結界がはじけた。
「中にいる人間は、全員魔法を扱えるが実力者はない。押し入るぞ。」




