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戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました  作者: 志熊みゅう
第五幕 戦争

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4. 降伏

 敵陣もこちらに精霊使いがいると知っていたら、おそらくこの状況で戦争を仕掛けてこなかっただろう。だってトヴォー側の補給が間に合わないことを見越して、この時期に停戦を破って進軍したのだから。でも実際は、巧みに精霊を使いこなせる術師が戦闘に加われば、一体で戦況がひっくり返ることもある。精霊二体での応戦は、まさに奇襲成功という訳だ。


 雨が止んで、業火の熱波で地面が乾き始めた。


「スルゲ・ゴーレム!――目覚めよ、ゴーレム!」


 ゴーレムを再召喚する。すっかりボロボロになった敵陣を、ゴーレムでなぎ倒していく。後からフィーラの騎士たちが攻め入る。


 ニオの魔法騎士は、なおも抵抗を続けている。けれど1対2で圧倒的に不利と言われていたトヴォーの戦況は大きくひっくり返りつつあった。


「イグネム・デトナ!――炎よ、爆ぜろ。」


 リアスが叫び声と轟音が戦場に響く。業火が遂に、鉄壁だったニオの防護魔法にヒビを入れていく。


「フランマエ・インフェルニ!――地獄の業火。」


 要塞を丸ごと炎が包んだ。ニオの騎士全体を覆っていた防護魔法も解けた。


「スルゲ・ゴーレム!――目覚めよ、ゴーレム!」


 私もさらにゴーレムの数を増やし、援護する。不死鳥はニオ側の騎士を焼き払い始めた。


 ――皆に告ぐ。フィーラ皇帝がボルタ部隊を正式に反乱軍とみなした。これから討伐に向かうと、皇帝よりトヴォー王に連絡があった。ニオは停戦の申し込みをしてきている。できる限り、捕虜として騎士たちを確保せよ。賠償金の交渉材料とする。


 ノルディーン部隊長の声が、脳内に直接響いてくる。ああ、これは通信魔法の一種だ。通信魔法そのものは、さほど難しい魔法ではないが、傍受や妨害を受けやすいのが欠点だ。その欠点を補いながら、しかも複数の相手に同時に脳内に届けるのは、かなり高度で専門的な魔法である。


 この知らせを受け、フィーラとニオの魔法騎士の部隊を一人で戦闘不能にしたリアスも、戻ってきた。


「やったわー!リアス!フィーラに留学していた頃より、技のキレと威力が増しているんじゃない?」


「まあ雑魚しかいなかったからな。」


「せっかく人がほめているんだから、素直に喜びなさいよ!」


「ああ。ありがとう!」


 そこに、ノルディーン部隊長がやってきた。


「殿下、さすがのご活躍です。魔力補給ポーションをどうぞ。」


「ありがとう。初めから俺たちがいると分かったら、多分向こうも魔法騎士の編成を変えただろうから、今回はたまたまだ。」


 リアスは渡された魔力補給ポーションを勢いよく飲み干した。私もノルディーン部隊長に渡されたポーションに恐る恐る口を付ける。さわやかな酸味があって、魔法大会で飲んだものよりもだいぶ飲みやすかった。


「あとは、フィーラの反乱軍を打ち取るだけです。」


「ああ、任せろ。」


 ――皆に告ぐ。フィーラの反乱軍は降伏はしないと言っている。第1部隊から第3部隊までは、フィーラの要塞を取り囲め。これから反乱軍首謀者のマティアス殿下の首をとる。


 遂に……。フィーラ側から反乱軍認定されてしまえば、行くも地獄、退くも地獄。もはや、マティアス殿下は退くに退けないのだろう。


「お前の元婚約者も堕ちたものだな。」


「ニオのスパイに現を抜かした時点で廃嫡にすればよかったんです。」


「そういえばお前、フィーラのボルタ要塞の構造は分かっているか?」


「ええ、大まかには。妃教育で国の機密情報もある程度は勉強しましたから。」


「細かいところは大丈夫だ。この眼を使うからな。よし、お前の視た未来を現実のものにしに行くぞ。」

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