2. 開戦
翌朝早くから、フィーラとニオが戦旗を掲げた。魔法は詠唱時間の分、攻撃に時間がかかる。だから前衛には向かない。私たちは、他の魔法騎士と作戦を共有し、要塞の屋上から騎士たちの後衛を担うことになった。
「まあ、騎士の総数は報告にあった通りってところだな。」
屋上から戦場を覗き込むと、前線の一般騎士たちが次々にぶつかり合い、斬り合いを始めた。
「やはり数で圧倒的に負けていますね。ゴーレムでも少しは頭数の足しになるでしょう。スルゲ・ゴーレム!――目覚めよ、ゴーレム!」
国境から敵陣に向かって、何十体ものゴーレムを召喚する。所詮ゴーレムは泥人形。万能ではないが、これで幾分か騎士たちの消耗が防げるだろう。
一方、敵陣では風の精霊・シルフが呼び出された。前回の争いでもシルフの召喚後、大きく戦況が変わったと聞いた。今回は初めから投入されるようだ。
トヴォーの騎士たちの頭上に雲を呼んだ。どんどん雲が大きくなっていく。積乱雲が稲妻を孕み、戦場の空を覆う。なるほど、敵陣は激しい暴風雨で泥人形を溶かしていくつもりのようだ。
「フリゲ!――凍れ!」
積乱雲の発達を止めるために、他の氷属性の魔法騎士と共に、雲の核を狙って何発も冷気を打ち込む。積乱雲の成長が止まって、やがて雨が降り出した。
「インペトゥス・ヴェンティ!――疾風の一撃。」
氷魔法で小さくなった雲海を一気に吹き飛ばした。
「よし俺たちも反撃するぞ。まずは風の精霊・シルフを仕留める。」
「ええ、そうね。フェニクス・イグネア!――炎の不死鳥!」
「ドラコ・アルデンス!――来たれ、燃え盛る龍!」
二体の精霊が炎の尾を描いて空に舞い上がる。炎龍と不死鳥が素早くシルフを取り囲んだ。シルフは二体から放たれた炎舞を振り払うと、今度は空高く舞い上がった。灰色の薄い雲を一面に呼び寄せて、戦場全体に雨を降らせる。そこに、ニオ、フィーラ双方の魔法騎士が水魔法を援護射撃する。炎属性や土属性は水属性と相性が悪い。炎龍は雄叫びをあげ、国境沿いのゴーレムは崩れていった。
「フラトゥス!――突風!」
風魔法で薄雲を払うが、雲の広がっていく速さはそれより早かった。もちろんもっと威力が強く広範囲に影響する魔法はあるが、それではトヴォーの騎士たちにも被害が出る。
「――さすがに一筋縄に行かないか。よし一旦戻れ、炎龍!」
「ねえ、リアスどうする気?」
「ランデル伯爵を直接叩く。精霊を召喚できても実戦経験が豊富なわけではない。お前はここで他の魔法騎士と一緒に援護してくれ。」
「分かったわ。」
リアスが戻ってきた炎龍に飛び乗った。炎龍を包むように防御魔法を張り、敵陣に向かう。
「フランマエ・インフェルニ!――地獄の業火。」
リアスが敵陣に向かって炎を放つ。雨の中での攻撃で威力は半減しているが、それでもダメージはありそうだ。私も引き続き、風魔法で雲を追い払いつつ、不死鳥で敵軍に火の粉を撒き散らす。




