7. 月夜
作戦会議が終わって、和気藹々とメンバーたちと夕食を食べる。今宵のメニューは干し肉のスープと丸パン。干し肉の旨味が野菜に染み込んでおいしい。温かいスープが、冷えた体に染み渡る。私は貴族らしい豪華な食事も好きだが、こうして野営で食べる食事も悪くないと思った。
「エディットは本当においしそうに食べるね。」
「……リアスと一緒だからかな?」
リアスは、少年姿の時と変わらず、ずっと私の隣にいる。でも私より頭一つ大きい青年姿のリアスだと少し落ち着かない。同じリアスのはずなのに、胸がざわついて仕方ない。
「――この後、ちょっといい?」
夕飯のあと、リアスに声をかけられた。手を引かれてそのまま遺跡の近くまで来て、夜空を見上げる。
「まぁ、月がきれいね。」
「ああ。」
今日は満月だ。月明かりが二人を優しく照らしている。
「エディット、さっきちゃんと言えてなかったから。もう一回言っていい?俺は、君を愛している。」
「うん。私も好きよ。」
「君が神眼の持ち主だと知ってから、ずっと気になっていた。君と話をしたり、実習でペアを組んだりしていくうちに、いつの間にか、自分でもどうしようもないくらい、君に惹かれていた。それこそ帰国の時、君を誘拐してトヴォーに連れ帰ろうかと思ったくらい。正式な手続きは王都に帰ってからになるけど、俺と結婚して欲しい。これからも俺の傍にいて欲しい。」
「結婚!?でも、ユカライネンの家は跡継ぎが必要だから……。私が王子妃や王太子妃になることを義父は望んでいないんじゃないかしら。」
リアスのことは好きだ。でもいきなり『結婚』の二文字が話に出て、混乱する。つい最近まで、祖国フィーラ帝国の第一皇子の婚約者だった。隣国の王子様から急に求婚されるなんて。
それに今回の亡命の件で、頭が上がらないほど義父の世話になっている。でもそれは彼にも、私を跡継ぎに据えるというメリットがあってのこと。まずなんにせよ義父に相談しなければと思った。
「ねえ、エディットはどう思っているの?――俺は君と一緒にいたいし、君を守りたい。君と一緒に年をとって、喜びも悲しみも分かち合いたい。」
もう絶対離さないとばかりに、強く抱き寄せられる。私も自然とリアスの背中に手をまわした。
「それは……。私もずっと一緒にいたい。何気ない会話も、喧嘩だって、リアスとだから楽しいの。」
「なら、後のことは心配しないで。君の家のこともなんとかするから。」
そのまま、唇が重なって、先ほどより深い口づけをした。
「もっとしたいけど、これ以上は結婚してからだな。俺はアイツと違うからな。」
リアスが照れ隠しなのか、悪戯っぽく笑う。
「俺は生涯、君を君だけを愛し続けると誓うよ。マティアス殿下のような真似は絶対にしない。」
リアスは絶対にマティアス殿下のようにならない。だってリアスは強いし、自信がある。他人に流されない。でもそれを言語化してくれたのが、本当にうれしかった。
「うん。ありがとう。私もあなただけを愛している。」
零れ落ちそうな星空の下で再び甘い口づけを交わした。月明かりに照らされた二人の影は、寄り添うようにひとつに溶けていった。




