1. 死の太陽
ボルタ遺跡群へは本当に馬車で三日かかった。長旅の間、リアスとは色々な話をした。
「エディットは死の七日間の話はどこまで知っている?」
「神話だと、確か最高神に娘を殺された軍神が怒り、反乱を起こした。死の太陽でたった七日で国中を焼き尽くした……。」
「軍神の怒りというのは軍部のクーデターだろうな。」
古代文明は世界の全てを掌握できる戦闘兵器の開発を急いでいたと、遺跡の発掘調査からも分かっている。ボルタはその軍事施設が置かれた地区で、軍事関連の地下遺跡が散在している。そしてボルタの遺跡群のうち、最も大規模な施設の遺跡がトヴォー王国側にある。
現存する遺跡のほとんどが地下にあるのは、もともと軍事機密で施設が地下につくられたとか、地上の建物が死の太陽で灰と化したとか、諸説ある。
ニオ共和国は長らく"死の太陽"を復元しようとしている。そのためにトヴォー王国にある遺跡の調査発掘がどうしても必要で、何度もトヴォーに紛争を仕掛けてきた。
「あの遺跡には"死の太陽"の動力源のパーツが眠っている。もしニオが"死の太陽"を手に入れたら、世界は滅亡だ。だから、動力源を破壊もしくは回収するのが今回の任務になる。それとあの遺跡に眠る情報も危険だ。下手に流出した場合、軍事応用される恐れがある。調査が済んだら速やかに破壊する。」
「分かりました。でもどうして、マティアス殿下はニオ側についたんでしょうか。二国の長く続いた友好国の関係にヒビが入ることはあの人も分かっていたはず。」
「立太子に向けて、武功をあげたいというのはあるだろうな。もしかすると、既にライラ嬢がニオの間者に繋げていたのかもしれない。」
「そうですわね……。」
「実はトヴォーでも、カスペルとニオにつながっているという噂がある。アイツとはここ数年顔を合わせて話していないから、本当のところは分からないが。」
会っていないということは、つまり"鑑定"もしていないということか。
「カスペル殿下がニオと繋がっている、と?」
「ああ。カスペルとニオ共和国は、利害が一致している。王妃、つまり俺の母親はニオに滅ぼされた旧エット公国の公女だ。彼女はエット公爵家、唯一の生き残り。ニオは、この血筋が断絶できていないのは困るんだよ。」
「なるほど……。」
忍び寄るニオ共和国の影に背筋が凍る。リアスは奪われたくない。
「そうだ。久しぶりにリアスの未来を視ましょうか?」
「いきなりなんだよ。」
「前にリアスの未来を視たのは学院時代で、あの"夢"はもう現実になりました。今度は新しい未来を視ます。……いえ、私が少し心配なんです。」
そう言って、さっと彼の小さな手をぎゅっと握りしめる。
戦場だ。敵陣には見覚えがあるあの騎士服も混じっている。フィーラ帝国の騎士だ。炎龍が火の粉をまき散らし、フィーラの騎士、ニオの騎士を焼き払っていく。リアスはそのままフィーラ側の要塞に侵攻した。最終的にマティアス殿下とリアスは対峙した。絶望に満ちたマティアス殿下の表情、これはもしかして以前視たマティアス殿下の最期?いや、少し違う気がする。最後「エディット」と自分の名前を呼ばれた気がした。どうして、私の名前を?そこで夢は途切れた。
「……戦争でリアスが闘っていた。途中で醒めてしまったけど、トヴォーが優勢のように視えました。リアスに攻め入られたマティアス殿下が絶望に満ちた顔をしていて、今にも泣きそうだった。」
「それはいい気味だ。ついでにお前の仇を取ってやる。」
リアスが不敵に笑った。




