15. 解析
魔法研究所に戻ると、真っ先に呪いの専門家という男を呼んだ。コンコンと、所長室をノックする音がする。扉を開けると、いきなり、絶叫された。
「ああ!ユカライネン第一補佐官!僕のこと覚えています?ロビンです。ロビン・レードルンド!」
ロビンと名乗った青年は、アッシュブロンドのクセっ毛を後ろでまとめた、ひょろ長い男性だ。一瞬誰かと思ったけど、すぐに思い出した。魔法大会のあとのパーティーで話しかけてきたサリーン男爵の後輩だ。あの時は、自分のことを根掘り葉掘り聞いてくるんで、困ったっけ。
「あの、その節はどうも……。」
「僕、感動したんです。あなたと同じ時代に生まれたことを神に感謝しました。しかも同じ研究所に勤められるなんて何たる幸運。あなたは魔力量が多いだけじゃない。その技術、その精度まさに至高。神に近いと言っても過言ではない。」
随分鼻息荒く語っているが、恥ずかしくないのか。本人は至って真面目に語っているようで、熱っぽい瞳でこちらを見つめている。そういえばこの人、話し始めると長いんだよな……。
「おい、エディットに触るな。いつまでもそこに突っ立ってないで、早くここに座れ。」
「怖いなもう、所長。では本題ですね!今日は呪いの件でお呼びだと聞いています。」
「ええ、そうなんです!」
「所長、あの呪いはご自身で何とかしないと無理ですよ。俺にはどうにもできない。」
「いえ、違います。今日はそっちの呪いじゃなくて……。」
私は、遺跡の隠し部屋で起こったことを事細かにロビンに話した。
「へえ、それは興味深いですね。古代遺跡の隠し部屋の呪い。」
「いや、あの部屋にかけられていたのは呪いではない。」
リアスは、頑なに呪いではないと言い続けている。そりゃ、神眼による鑑定に間違いはないんでしょうけど、鑑定漏れということも考えられる。しっかりと診てもらわないと。
「では、失礼しますね。」
ロビンの杖の動きに合わせて、いくつもの魔法陣が同時に展開していく。詠唱と共に浮かび上がっては消える魔法陣が美しい。
「所長はすでに呪いがかけられた状態なので、新しくかけられた呪いかを判別するのが、すご~く難しいんです。僕じゃなきゃできませんね。」
私語も多いけど、同時にいくつもの解析魔法をかけていく。まさにプロの仕事だった。一通り解析魔法をかけ終わると、ロビンが言った。
「う~ん。結論からいうと、新たな呪いにはかかっていないです。まあエーヴェルトの墓所にかけられた呪いだったら、全く未知の呪いの可能性もありますけど。」
「そうですか。では、あの幻影は何だったんでしょう。」
「それ、記憶を保存しておく魔法装置じゃないですか?古代文明で流行っていたと聞いたことがあります。現存するものは、報告がないので大変興味深いです!魔道具班の連中もテンション爆上がりじゃないですかね。」
「そんな希少なものだったんですね。」
そうかあれは、イリスの記憶。そして愛する妻との大切な思い出。そういえば、イリスの妃についてはほとんど伝承されていないとリアスが言ってたな。
「じゃあ、そろそろ行きますね。僕も"遺跡"調査に行かないといけないんで。」
「遺跡?」
「やっばいのが南の方にあるんですよ。サリーン男爵から応援を頼まれました。」
「それ以上余計なことは言うな。今日は、出発前にありがとう。助かった。」
「所長こそ、頑張って下さいね~。」
ロビンは軽口をたたいて、部屋を後にした。




