10. 壁画
遺跡の内部は暗い。ランプを灯しながら地下へと続く階段を降りていく。人一人がやっと通れる狭さで、途中ぬかるんだり、苔が生えたりしていて、とにかく足場が悪い。転ばないように、一歩一歩、歩みを進める。
「ここが前室か。皆、右側に。」
スヴェンが声掛けをする。天井には賢者エーヴェルトの契約精霊だったという白龍。神話では"白龍"と伝わっているが、壁画にあるその姿は私の契約精霊"氷龍"にそっくりだ。私は複写魔法で、調査ノートに天井画を写し取った。
「エディーの龍だ!」
「あの龍、エディーの龍に似ているね。」
まさか神眼だけではなく、契約精霊まで同じとは、何の因果なのか。壁に描かれた壁画は大事な部分が破損していて、何の絵かよく分からなかった。よく見ると、故意に削り取られたようにも見える。
「これ、本当に盗掘した奴らの仕業かな?それにしては意図的に情報が消されているように見える。」
リアスが首を傾げた。私も同感だ。壁画にはいろいろな違和感があった。本来、描かれるべきエーヴェルトと思しき人がいない。それに、花をあしらった絵が多く、男性の墓というよりは女性の墓のようだった。
床面には、いくつか王家の紋章が彫られている。トヴォー王家の紋章は、金色の瞳を背景に、赤龍と白龍とが交差したデザインだ。これは最初にこの遺跡が発見された当時には、埃やがれきに覆われていて確認できなかったものだ。その後の調査が進み、ようやく見つかったのだという。これらも次々とノートに写していった。
「便利な魔法だな。それ、俺にも教えてくれ。」
いきなりシモンが食いついてきた。リアスが不機嫌そうに答えた。
「お前の、その何でも教えてくれってスタンスはよくないぞ。」
「なんだと、クソガキ!お前に聞いていない!」
「こんなところで、喧嘩しないで下さい。シモン様、後で教えます。これ簡単だけど便利な魔法なんですよ。」
このくらい教えても損はないのに、急にどうしたというんだ。リアスを横目で睨むと、部屋全体を見渡すリアスの瞳が金色に輝いた。
「エディー。この部屋には報告されている以外に仕掛けや装置はない。早く次の部屋、霊廟に行こう。」
え!?そういえば洞窟でも一瞬リアスの目が金色に輝いた気がしたけど、もしかして鑑定って、物にも使えるの?そんな遺跡向きの才能だったなんて。うらやまし過ぎる。




