9. 墓所
翌朝、私たちは満を持してエーヴェルトの墓所に向かった。遺跡に残されたものが少なくても、それでも何か未来視を操る手がかりが掴めるのではないかと期待した。
道中は木の根が張る獣道を通ったり、ガレ場を登ったり、決して歩きやすい道ではなかった。スヴェンの子どもたちは訓練されているのか、スヴェンと一緒にすいすいと進んでいく。生粋の貴族令嬢の私はついて行くだけで必死だ。少年の姿のリアスも、限界だという顔をしている。二人で顔を見合わせた。
「リアス、手を。アラエ・ヴェントルム――風の翼!」
ついに、ガレ場を登ることを諦めて、魔法の力を使う。
「エディーとリアスがずるっこしている!」
双子の片割れ、トビアスが私たちを責めた。
「あんたの魔法が素晴らしいのは知っているが、だらしない。この程度のガレ場、魔法の力を使わずとも登れるだろう。トレーニングが足りてないな。」
「私には無理よ。生粋の貴族令嬢だもの。」
「魔力も体力も限界はあるからな。どちらも使えるのなら、余裕がある方を使うのは当然だ。」
リアスが口を尖らせて言った。その後も、私とリアスはところどころ魔法を使いながら、なんとかスヴェンたちのあとを追った。シモンは意外とガッツがあるのか、魔法を使わずに、スヴェンの後を追っていた。長い森を抜けると、ついにそこに目的のものがあった。
「――これが、エーヴェルトの墓所。」
トヴォー王国建国の祖の墓というには、あまり小さい盛り土。その入り口は長らく塞がれていたのか、調査時に作られた真新しいものだった。伝説として語り継がれる彼と、この世界を生きていた彼の姿に、だいぶ乖離があるように思った。
「ほら、ちっとも面白くないだろう。」
双子、シモンも拍子抜けしたという表情だ。
「最強の軍師と習うからもっと立派な墓かと思った。これ本当に本物なのか?」
シモンが首を傾げた。リアスが淡々と反証した。
「まず、この墓所の内部から、現王家の紋章がいくつか発見された。これは、埋葬された人物が王家の人間、あるいは王家と深い関わりを持つ人物である可能性を示している。あと、賢者エーヴェルトを象徴する"白龍"がモチーフとして用いられていたことが、この墓が彼のものであると推定された最大の根拠となっている。それから複数の神話でも、エーヴェルトは神の子が聖地と崇める神の森に埋葬されたとある。遺跡の場所も時代的にも、彼の存命期と一致している。」
「とりあえず、中に入りましょう。今回の調査対象は前室と奥の霊廟です。」
「ああ、行こう。チビたち、特にそこの白い頭、大人から離れるなよ。」
リアスが少しむくれながらも、私の手を掴んだ。




