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戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました  作者: 志熊みゅう
第三幕 エーヴェルトの墓所

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7. 洞窟

 屋敷に戻ると、シモンとスヴェンの双子たちはもう寝たようで、リアスだけが居間で起きていた。


「……遅い。無事でよかった。心配した。」


 リアスは、ぱっとこちらに駆け寄ると、抱きついてきた。少し眠そうな顔をしていて、本物の子どもみたいでかわいい。前に小さな体だと、大人の時よりも睡眠時間も長くなると言っていた。無理して起きてくれていたのか。


「トロール如きにやられるほど、やわじゃないですよ。そういえば、リアス。新しい遺跡を見つけたんです。トロールがねぐらにしていた洞窟に壁画があって、明日行ってみましょう。」


「……。」


 私の帰還に安心したのか、立ったままリアスは眠ってしまった。私は彼を抱き抱えると、寝室まで運んだ。


 翌朝は、スヴェンたちは、早朝から西の森の魔獣調査に出かけた。私はリアスに改めて、洞窟のことを報告した。


「遺跡ねえ。でも壁画と祭壇以外に何もないんだろう?」


「ええ、トロールの魔力以外、魔力残滓もありませんでした。でも歴史的に貴重な発見ですよ。神の森ですし。多分。」


「そうだな……。エーヴェルトの墓所は少し距離があるし、案内なしで行くのは難しい。先にその洞窟を調べるか。」


「ありがとう!リアス。」


 私たちは、馬に跨り、クノプの集落に向かった。集落までの道は一本道だ。


「昨日はありがとうございました!」


 集落に着くと、私のことをスヴェンに聞いたのか住民たちが駆け寄ってきた。


「いえ、当然のことをしたまでですよ。」


「それにしても、ここは神の森だというのに、魔獣が出るなんて。」


「普段は魔獣が出ないそうですね。」


「ええ。かの昔、"神の子"が滅ぼされそうになった時も、この森に魔獣が溢れたと聞きます。しかし、神の子とその子孫がこの国を治めるようになってからは、平和そのものでした。」


「勇者・イリスと賢者・エーヴェルトですね。」


「歴史書ではそうなっていますが、この集落に伝わっている話では、賢者様は女性です。勇者と子を成し、それが現王家につながる、と。」


「なるほど。」


 これは、歴史書によくある"諸説ある"っていう奴かしら?それにしても賢者が女性という話は初めて聞いた。しかも勇者と結婚したとは。


「あの森に魔獣が出るなんて。もしかしたら、神の子であられる現王家に何かあったのではないでしょうか?ああ神よ、我らを救いたまえ。」


 まさしくイリスの末裔にあたるリアスは、終始呆れた顔をしてこの話を聞いていた。


「――本当に色々なことを言う奴らがいるな。下らん、行くぞ。」


 リアスが吐き捨てるように言った。


「ちょっと待ってよ、リアス。」


 私たちは、昨日つけた魔力残滓を追って、洞窟に向かった。洞穴の前には、昨日倒したトロールの死骸が転がっていた。


「ここよ!」


「……遺跡っていうより、洞穴だな。」


「誰が何と言おうと、遺跡よ!グロブス・イグニス!――火の玉。」


 早速内部に入る。昨日の壁画を見つけ、リアスに見せた。


「ほら、これこれ!この丸いのなんでしょうね?」


「――死の太陽じゃないか。」


「古代文明を滅ぼしたという、あの?」


「ああ。」


 壁画を手際よく調査ノートに写していく。他の絵とは少し異質の花畑の絵が少し気になった。


「そして、真ん中には祭壇、と。」


 リアスの眼が一瞬、金色に輝いた。


「――本当にここ、何もないな。戻るぞ。」


「歴史のロマンが分からない人ね。」


 私たちは、そのままスヴェンの屋敷に戻った。

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