一緒の夜
暑さで目が覚める。
隣にはパンツ一枚の姿でヤマトが抱きついて眠っていた。
「暑いからって裸で寝てると風邪ひくぞ」
そう言いながら、まだ眠たそうに目をこすっているヤマトにパーカーを羽織らせた。
ふと目をやると、ヤマトの下半身が盛り上がっている。
「勃ってるよ……」
そう言うと、ヤマトは顔を真っ赤にして前を手で隠しながら、慌ててズボンを履いた。
「溜まってるの?」
からかうように聞くと、「うるさいっ」と軽く叩かれた。
「花火、20時からだよな。18時ごろ出れば間に合うか。
それまで、何してようか?」
「……お腹すきました」
「ちょっと待ってろ、なんか作る」
キッチンに降りて冷蔵庫を開けると、卵がたくさんあったのでチャーハンを作り、ヤマトのいる部屋へ運んだ。
「うわぁ~美味しそう。先輩の手作り!?
いただきます!」
ヤマトは嬉しそうにガツガツ食べ、食後はテレビを見たり、ゲームをしたりして時間を潰した。
――
2人で甚平に着替え、夏祭りの準備をする。
「先輩、似合ってますよ!ぼく、どうです?」
「ヤマトも似合ってるよ。カッコいい」
2人で甚平姿の写真を撮った。
花火大会の会場に着くと、屋台がずらりと並び、人混みがすごい。
「うわぁ~何買おうかな~。先輩!射的!射的やりましょ!」
そう言って手を引かれた。
「よっしゃ、やった!」
ヤマトを見ると、よく分からない猫の置物を落として大喜びしていた。
お好み焼き、たこ焼き、綿菓子、水ヨーヨー――いろいろ買って、気づけば結構な金額になっていた。
「先輩!くじ引きやりましょう!」
くじを引くと、光るメガネが当たり、それをかけてみせるとヤマトが笑ってくれた。
いつもよりも笑顔が多く見えたのは、不安が消えたからかもしれない。
――
花火の時間が近づき、河川敷に腰を下ろす。
たこ焼きとお好み焼きを半分ずつ分けて食べていた時、
「あ、箸落としちゃった……」
困っていると、ヤマトが「あーん」と差し出してきたので、そのままかぶりついた。ヤマトは楽しそうに笑っている。
「先輩、話があります」
「ん?」
「ぼく、先輩のことが……」
ヒュー……バーン!
花火の音がその言葉をかき消した。
色とりどりの花火が夜空に広がり、ヤマトは目を輝かせて見上げている。
しばらくすると、ヤマトが俺の肩に寄りかかってきたが、周囲には同級生カップルもいたので、見られたくない気持ちもあり、さりげなく少し距離を取った。
花火が終わり、観客がぞろぞろと帰り始める。
「ヤマト、さっき何言おうとしたの?」
「……なんでもないです。先輩のたこ焼き、食べていいですか?」
「いいよ」
そう言うと、ヤマトは嬉しそうに残りを平らげた。
「今日も泊まってく? 明日、部活ないし」
「はい! 夜更かししましょ!映画、一気見ですね!」
帰り道、レンタルショップでSF映画を3本ほど借りた。
――
帰宅後、2人とも汗をかいていたので風呂に入ることに。
ヤマトが「一緒に入りましょう」と言うので、一緒に風呂へ。
狭い湯船に、俺が先に入り、ヤマトが背中を向けて身体を寄せてくる。
その拍子に、俺の股間がヤマトの腰あたりに当たってしまう。
ヤマトが体を動かすたびに擦れて、なんとも言えない感触になる。
俺はヤマトの腹の前に腕をまわして、狭いながらも一緒にくつろいでいた。
……と、ヤマトが急にそわそわしはじめる。
「どうした?」
「……なにも、ないです。先上がります!」
のぼせそうだったのか、そう言って先に風呂を出ていった。
俺が追って上がると、ヤマトはまだ体もきちんと拭かずに服を着ている。
「どうした?」
「な、なんでもないです……。トイレ、行ってきます!」
トイレに入って、なかなか出てこない。
「ヤマト?大丈夫か?」
「だ、大丈夫です!」
しばらくして出てきたヤマトは、どこかスッキリした表情だった。
「抜いたの?」
「え!? ち、違いますよ!何言ってるんですか!」
明らかに挙動不審だったけど、気にしないことにした。
――
その夜は映画を見ながら、いつも通り布団で一緒に寝た。
次の日、ヤマトと「部活でね」と約束して、解散した。




