都会に浮かれるふたり。
『おおぉ!大きいですね!』
スカイツリーに到着すると、ヤマトはテンションMAXで叫んだ。
「お前、ちょっと静かにしろ!みんな見てるぞ!」
俺は慌ててヤマトの口を押さえる。
「先輩、早速登りましょうよ!階段ですか? 何段あるんでしょう?結構かかりそうですね!」
「お前の無知さが怖ぇわ。ちゃんとエレベーターがあるんだよ。1分もかからずに登れるっての」
「えっ、本当ですか!?」
俺がチケットを買いに行く間、ヤマトにはベンチで待っててもらうことにした。が――
戻ると、ヤマトの姿がない。
(どこ行ったんだあいつ…)
周りを見渡すと、スカイツリーのマスコットキャラの周りに子どもたちが集まっている。その中に、ヤマトの姿を見つけた。
「どこ行ったかと思って心配したぞ」
「すみません。なんか変なのがいて、かわいいなぁって思って」
「変なのって…それマスコットキャラな。写真、撮るか?」
「はいっ!」
記念写真を撮って、エレベーターに乗り込む。
「先輩、このエレベーター広いですね」
『ピンッ』と音がして、扉が開く。
「うわっ、もう着いたんですね!」
エレベーターを降りると、ヤマトが俺の手を引っ張って窓際へ駆け出す。そこには、青空が広がり、東京の街並みが一望できた。
「おぉ~! 雲が近いですね! 建物がちっちゃい! 人がゴミのようだ!」
「そうだなぁ…」
「先輩、最後のボケ無視しないでくださいよ。恥ずかしいじゃないですか」
そのあともヤマトはフロア中をキョロキョロして、俺を連れて一周した。
スカイツリーには床がガラス張りになっていて、真下を覗けるスポットがある。
「ヤマト、目ぇつぶってみ?」
「え、なんでですか?」
ヤマトが目を閉じたところで、そこまで連れて行く。
「開けていいよ」
「おわっっ!!」
目を開けたヤマトは驚いて数歩後ずさる。
「び、びっくりしましたよ!」
怖がりながらも、ヤマトはガラスの上から恐る恐る下を覗いた。
「先輩に殺されるかと思いました…」
「大げさなやつだな」
一通り展望台を楽しんで、俺たちは地上へと降りた。
「いや~、楽しかったですね!ちょっとお腹すきました」
「ほんと高かったな~。お前のビビりっぷりはウケたけどな」
「ビビってませんって!」
ヤマトは笑顔で、すごく楽しそうだった。
スカイツリーの近くのパン屋で腹ごしらえ。
「見たことないパンばっかですね。やっぱ東京って、知らないものがたくさんありますね!」
「お前、ほんと田舎者だな」
次は渋谷へ向かい、スクランブル交差点を目指す。
「人がいっぱいですね。これが、あのスクランブル交差点ですか?」
「そーだよ。なんかイメージと違う?」
「実際に歩くと、ただの人混みですね」
身もふたもないことを言うヤマトを、交差点が見渡せるカフェへと連れて行った。
ドリンクを買って階段を上がると、外国人観光客たちが窓際で写真を撮っていた。
(やっぱここって、世界的な観光スポットなんだな)
ヤマトもその中に混じって、はしゃぎながら写真を撮っていた。
「先輩!これですよ!テレビで見るやつ!」
「不思議なやつだな、お前は…」
東京観光を満喫して、そろそろ疲れも出てきた。
「ホテル行くか。東京、もう満足?」
「うん!サイコーに楽しかったです!」
ヤマトは幸せそうな笑顔を浮かべていた。
ホテルのことは、まだ内緒にしてある。
「そういえば、ホテルってどんなとこなんですか? 楽しみですね!」
ホテルの最寄駅に着くと、DLから帰ってきた人たちやこれから向かう人たちですれ違う。みんな、すごく楽しそうな顔をしていた。
「もう僕、テンション上がりすぎて抑えきれないです!」
ヤマトは体をうずうずさせながらはしゃいでいる。
「ヤマト、ここだよ」
「……」
ヤマトが固まった。微妙だったか…?
「ここですか!? ここってテレビで見たことあるけど、めちゃくちゃ高いホテルじゃないですか!? うわぁ~、どんな部屋かな!? さすが先輩です!!」
褒められて、素直に照れてしまう。
ロビーでヤマトを待たせ、チェックインを済ませる。ふと見ると、ヤマトはキョロキョロと落ち着きがない。
「ヤマト、行くぞ~」
ホテルマンに案内されて部屋へと向かう。
明らかにカップルや家族向けのホテルだが、男2人でもスタッフは何一つ気にせず自然な対応をしてくれた。
(さすが夢の国のホテルだな)
部屋に入ると、その広さと綺麗さに思わず見惚れた。
内装はDLのキャラクターたちで溢れていて、まるで遊園地の中にいるようだ。
「先輩!窓からDLが見えますよ! すごい!我慢できないなぁ!」
ヤマトの方に行くと、窓の外に広がる遊園地の明かりが夜の景色に映えて、まるで夢の中のようだった。
「綺麗だな。ホテル、気に入ったか?」
「夢みたいです! すっごい!!」
「うわっ!先輩!お風呂ガラス張りですよ!? エロいです!あとで一緒にシャワー浴びましょ!」
まだ遊園地にすら行っていないのにこのテンション。明日、どうなっちゃうんだろうな。




