小悪魔な後輩
(なんで…俺はあんなことを…)
テスト期間の真っ只中。初日の出来事が、未だに頭から離れない。
(俺が、ヤマトに触りたいなんて…)
その日の帰り道、ヤマトが俺を追いかけてきた。
「先輩ーっ!!」
「なに?」
「明日の物理のテスト、ヤバいんで…教えてください!」
「お前、数学のときも同じこと言ってたよな。まあ、いいけど…」
(あんなことがあった後でも、なんでこいつは、こんなに普通でいられるんだろう…)
「先輩? いいんですか? ダメですか?」
「あ、ああ。いいよ。大丈夫」
部屋に着くと、ヤマトが言った。
「制服だと窮屈なんで、運動着に着替えますね」
そして、目の前で着替え始めた。
「ジロジロ見ないでくださいよー」
冗談まじりに笑いながらそう言うけど、俺の視線は自然と吸い寄せられる。
綺麗な肌、尻、そして股間…。
「見てねーし」
なんとか目を逸らして、平静を装った。
着替えを終えたヤマトが、俺の隣に座って勉強を始める。
「ここが、わからないんですよ」
(俺は、こいつが怖い。ヤマトに、俺の心がかき乱される…俺はいったい、どうしちまったんだ)
「先輩、聞いてます?」
ヤマトが、俺の腕に触れてきた。
ドキッ。
とっさにその手を振り払ってしまった。
「せ…先輩? どーしたんですか?」
(なんだ今のは…ただ触られただけなのに…)
たったそれだけで、体が熱くなって、心臓がバクバクして、顔が真っ赤になった。
「な、なんでもない。ごめん。えっと…なんだっけ」
気を紛らわせるように、俺はヤマトの隣から立ち上がって、向かい側に座り直した。
「はぁ~、疲れた。このへんで終わりますか」
ふと気づけば、もう18時前になっていた。
そのとき、ヤマトがふいに言った。
「先輩、この前のことなんですけど…。僕が寝てる間に、先輩…僕の、あそこ触ってたんですよね?」
不意打ちだった。そんなこと、今さら聞かれるとは思っていなかった。
「…ああ。冗談だよ。お前が勉強中に寝ちゃったから、イタズラしようかなって思っただけで…」
「そーですか…」
(そうだ、それでいい。本当のことは言えない)
「ごめんな、あんなことして…」
「大丈夫ですよ」
そう言って、ヤマトは「じゃあね」と笑って帰っていった。
一人になった部屋で、俺は座り込んで頭を抱えた。
(俺は…本当になんなんだよ。
本当に、男を好きになっちまったのか?
ヤマトへの気持ちは、
後輩として? 友達として?
…それとも、恋人として?)
(今日、ヤマトに触れられただけで、あんなふうになったのは…好きだから?
それとも、ヤマトとヤりたいから?)
(俺は…ヤマトに触れていたい。
触れられたい。
俺は、ヤマトが好きだ)
あいつが言ってた――
「先輩の気持ちに、心が追いつくまで…その先は言わないでください」
(俺はただ、認めたくなかっただけだ。
それが“普通”じゃないから)
そんなぐちゃぐちゃの気持ちを抱えたまま、テスト期間が終わり、冬休みに入った。




