世界の滅亡とか猫のはなし。
11月に入り肌寒い日が続くようになった頃、ヤマトが寒さを理由に抱きついてくることが多くなった。
「お前、そんなにくっつくなよ」
「え~、いつも何も言わないのに。なんで今日はダメなんですか?」
「限度ってもんがあるだろ。動きにくいんだよ」
「わかりました……控えます」
少し落ち込んだ顔。でも、これくらいがちょうどいいのかもしれない。
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土曜の部活終わり。
「先輩! 久しぶりに泊まりに行ってもいいですか?」
「別にいいけど、何かするの?」
「いや、特には……ただ、一緒にいたいなって」
「まぁいいけど。いつも通り映画でも借りてく?」
「うん! たまにはホラー以外がいいです」
「じゃあヤマトが選んでいいよ」
「やったー!」
ヤマトはレンタル店に入ると、恋愛映画のコーナーに一直線。
「いやいや、選んでいいとは言ったけど、男二人で恋愛映画はないだろ」
「え~、先輩といいムードになれるかなって」
パシッと頭をはたいた。
「冗談ですよ~。じゃあさっき出てた新作の、世界が滅ぶのを防ぐやつにしましょう」
「よくあるやつだけど、嫌いじゃないしな。いいよ」
映画を借りて俺の家へ。
「お母さんに連絡しなくていいのか?」
「朝言ってきたので大丈夫です!」
「お前、最初から泊まる気満々だったな」
ヤマトがニヤリと笑う。
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部屋に着くとベッドに倒れ込み、ヤマトも隣に横たわってくる。
「近いよ~」
「最近我慢してたんで、今日くらい許してください……」
子猫みたいな目で見てくる。
「しょうがないな~」
そのまま覆いかぶさると、
「せんぱいっ、重い!」
じゃれ合っているうちに、二人とも眠くなった。
「先輩、くっついて寝ていい?」
「いつも聞かずにくっついてくるくせに」
ヤマトがまたピタリと体を寄せてくる。髪に顔をうずめると、いい匂いがした。
「先輩、汗くさいですよ」
「え!? 着替えるわ」
「いいです。この匂い、好きですから……」
「お前、変態だな……」
ガンッ、と頭突きされた。
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目が覚めたら18時前。部屋が薄暗い。
ヤマトの腹がグゥ~と鳴る。
「腹減った? 親出かけてるし何もないんだよな。コンビニ行くか」
外はすっかり夕暮れ。ヤマトは下手くそな鼻歌を歌っていた。
「お前、下手くそだな~」
「鼻歌に上手いも下手もないですよ。楽しく歌えばいいんです!」
「ニャ~」
「お前、猫の鳴き真似うまくね?」
「何も言ってませんよ? あっちから聞こえました」
畑の横にダンボールがあり、中には白と黒のまだら模様の子猫がいた。小さく鳴いている。
「捨てられたんですね……可哀想」
ヤマトが子猫を抱き上げ、撫でると気持ちよさそうに目を細めた。
「先輩、どうします?」
「……放っておけないな」
「先輩の家に連れてってもいいですか?」
「え!? 俺ん家?……まぁ、小さい時猫飼ってたし、大丈夫かな」
「よかった! 僕の家は母が猫アレルギーなんで……じゃあ僕、夜ご飯と猫の餌買ってきます!」
ヤマトが走ってコンビニへ向かった。
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部屋に戻ってミルクと子猫用の餌をあげると、ガツガツと食べはじめた。
「やっぱりお腹空いてたんですね。可愛いなぁ~」
新しいダンボールにタオルを敷き、そこに子猫を寝かせるとすぐに眠りについた。
「先輩の家で飼えますか?」
「いやぁ、それは親に聞いてみないと……一晩寝かせて、明日話してみるよ」
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ご飯を食べながら、ヤマトは何か考えていた。
「何、考えてたの?」
「……決めました! この子の名前、ステネにしましょう!」
「お前、名前なんか付けたら愛着わくだろ。飼えなかったときどうするんだよ。それに、ステネって何だよ?」
「捨て猫だからステネです! 変って言わないでください!」
「いや、変だろ」
笑うとヤマトが拗ねた。
「まぁ、いいわ。ステネが寝てる間に風呂入ろうぜ」
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風呂から戻ると、ステネが起きてうろちょろ歩いていた。
「ステネ~おいで~」
ヤマトが手を出すと、ステネは安心したように再び目を閉じた。
「僕の新しい友達ですね」
「お前、そんな寂しいこと言うなって……ステネ~おいで~」
手を差し出すと、ステネはクンクンと匂いを嗅いで、そのまま離れて行った。
「……」
「先輩のこと、嫌いみたいですね~」
小馬鹿にするようにヤマトが笑う。
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映画は、世界を救うよくある展開のものだった。
「先輩だったら、1番大切な人と全人類、どっちかを選べって言われたらどっち選びます? 両方はダメですよ」
主人公は両方を救ってハッピーエンドだった。
「俺だったら……全人類かな。大切な人だけを選ぶのは、勝手すぎる気がする」
「そうですか」
「ヤマトは?」
「僕だったら……全人類って選べないかも。1番大切な人のいない世界なんて、生きてても意味がないですよ」
「……ヤマトにとっての1番って誰なんだろう」
「んー、すぐには決められないですよ。お母さんも、先輩も大切だし。先輩は?」
俺の中で「ヤマト」と言いたい自分と、それを拒否する自分がせめぎ合う。
「俺も……まだ決められないな」
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翌朝、ヤマトが起きる前に親に相談すると、ステネを飼っていいと即答された。
そのことを伝えると、ヤマトは飛び上がって喜んだ。
「ステネ~、またね!」
名残惜しそうに別れを告げたヤマト。
「今度から先輩の家に来る楽しみ、2倍ですね!」
ヤマトを見送り、ステネの元に戻る。
「……あいつのこと、よろしくな」
新しい友達にそう語りかけた。




