将来のはなし。
『ヤマトは進路、どうするの?』
修学旅行が終わると、次にやってくるのは進路の話だ。
俺もまだ、進学するか就職するかすら決まっていない。
土曜日、部活終わりにヤマトが俺の家に来て、将来について少し話をした。
『んー、まだ全然考えてなかったですけど……お母さんは「好きにしていいよ」って言ってくれてます!』
『そっかぁ~。俺もどうしようかなぁ』
『先輩は、やりたいこととかないんですか?』
『スーツ着なくて、休みが自由で、給料のいい仕事かな』
『うわ~先輩、それ完全にダメ人間ですよ』
『まだ本気で決まってるわけじゃないけどさ。
漠然とした夢はあるけど、これだってものがないんだよな。
ヤマトは、やりたいことないの?』
『僕、こう見えて友達少ないんですけど……世界中回って、いろんな国の人と友達になってみたいですね』
『いい夢じゃん。
でもその前に、もうちょっと勉強して頭よくなろうな』
そう言うと、ヤマトがふざけて怒りながら俺に抱きついてくる。
『でも俺、一つだけあるんだよな。
夢ってほどじゃないけど、「こうなったらいいな」って思ってること』
『なんですか?』
『将来、何をするかはまだ分からないけど……
ヤマトと、こうやって一緒にいられたらいいなって』
『先輩……僕も、そうなったらいいなってずっと思ってますよ。
先輩が卒業しても、その先も、ずっと一緒にいられたらって……
でも、そんなの無理なんですよ。
先輩が卒業したら、僕のことなんてもう気にかけなくなるんじゃないかって、怖いんです……』
ヤマトが少し寂しそうな表情でそう言った。
俺と関わりがなくなる未来を、今から不安に思っている。
(そんなこと、あるわけないだろ)
俺は右手を差し出して、小指を立てた。
『ヤマト、約束だ。
卒業しても、就職しても、俺は必ずヤマトに会いに行く』
ヤマトがその小指に、自分の小指を絡めてくる。
『はい!』
『ゆびきりげんまん、嘘ついたら
針千本の~ます。……指切った!』
2人で声をそろえて、指切りの約束をした。
『でも先輩? ちゃんと働かないとダメですよ!
ニートなんてさすがに恥ずかしいですからね』
『働くって! ちゃんと働くわ!
でもこれで将来の方針は決まったな』
『なんですか?』
『それは内緒』
『先輩ずるい! 隠し事はダメなんですよ~』
『隠してるわけじゃないよ。ただ、今これをお前に言っちゃうと、叶わなくなる気がしてさ……』
(俺の将来は、ヤマトと一緒に何かがしたい。
一緒に働くのもいいし、世界中回るのもいい。
なんでもいい。とにかく――一緒にいたい。それだけ)
漠然としてるけど、今はそれを一番に掲げていたい。
『でも、先輩も僕と同じこと考えてたの、嬉しいです』
ヤマトが、俺の手をそっと握る。
『僕と先輩って、以心伝心ですね』
急にそんなことを言われて、顔が赤くなりそうになる。
誤魔化すように、ヤマトの頭に手を当てて、髪をくしゃくしゃにした。
『うるせっ!』
—
『そういえば、お土産の八つ橋、美味しかったです!
ごちそうさまでした! お母さんが伝えてって言ってました』
『そっか、よかった。
そういえばさ、大仏のキーホルダーは使ってる?』
『…………』
『なんか言ってよ……』
『今だから言いますけど……怒らないでくださいね。
先輩……センスないですね』
ヤマトの頭を軽くパシッと叩く。
『怒らないでって言ったのにー!!』




