菊人形
掲載日:2025/10/08
ぼんやりと淡く儚くついては消えゆく蛍の光。敬一は母と夏の終わりに飾られる村の菊人形達を母に連れられて見に来ていた。
「母さん、あの右から三番目のお人形様のお顔は、お父様にそっくりだね」
「何を言うんだい、馬鹿な子だね。お国の為に立派に旅立たれたお父様な訳ないだろう」
そう言って、母は敬一を無理やりおぶさった。敬一の父は、第二次世界大戦中、神風特攻隊に選ばれ、母国のためにと死んでいった村の英雄なのだ。現在は終戦後から七年が経過し、焼野原だった村の復興もだいぶ進み、こうして村の伝統行事であった菊人形の祭りも開催されて三年目になる。
家に着くまでの道のり、母が背中越しの敬一に諭すように言う。
「敬一、来年からはお前もあの十体の菊人形様をお造りになる名誉が与えられるんだよ。胸を張ってちゃんと生きなさい」
ぞくり、と敬一の背筋が凍った。嫌だと、瞬間的に悟った。だってあれは、あの右から三番目の菊人形の首は-ー。
「僕の父さんのじゃないか……」
完




