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王城はなんか凄いし、大きいし、美しすぎた。


と、まあ語彙力が壊れてしまう位には私には衝撃的だったのだが、呆けている間にいつの間にかなんだか高そうなフカフカのソファに座らされていた。


横にいるセネシオはピシッと背筋を伸ばし、先程の面倒くさそうな感じは一切出さずに、前の人物にニコニコ温和そうな笑みを浮かべていた。

別人過ぎて温度差で風邪をひきそうだ。



「ほう、彼女が【神の落としもの】か。」



目の前に座るのはこの国の王。…らしい。


筋骨隆々の体躯。長い襟足を長いから、と粗雑にまとめられ一つに結ばれているのが分かる髪。

全身傷跡だらけの肌を隠すこと無く胸元を大きく開け、不精に生える髭でさえ大人の色香だと感じる荒々しい見た目の壮年の男性。


一国の王、と言うよりはマフィアのドン……なのでは?


が、如何にも仕事中です。というように書類の山に埋もれている。

しかも、その手は目に見えない速さで動かされたままこちらを見てガハガハと笑っている。


想像と違い過ぎて、緊張より驚きの方が勝っている状態だ。

謁見って、王の間とかじゃないんだ。



「はい。私がこの目で確認致しました。間違いなく、神の落としものであると。」


「はっはっはっ!伝説の中の事だと思っていたがまさか自分の代でお目にかかれるとは!」


「今は魔法を封じている状態なのですが、彼女は魔法のある所から来たようです。」


「先触れである程度は確認したが、お会いしたかったよ。」


そう言って、王はこちらにニコリと笑いかけ立ち上がった。


「紹介が遅れた、我が名はジョセフ。この国の9代目国王をやっている。君は?」


「ほ、本庄菖蒲と申します。魔法少女をしていました。」


握手を求められたので、握手をするとまた座るようにと手で誘導される。私はぺこりと頭を下げて座り直す。


「ホンジョウが名か?姓があるのか?貴族であったと?」


「いえ、私は平民で名前が菖蒲で本庄が姓です。私の生まれた国では誰しもが姓が有ります。」


「ほう、なるほどな。アヤメ嬢、魔法少女とは何なのだ?」


「魔法少女とは、お供妖精に気に入られた魔力を持つ者、かつ私の国で悪さをしていた敵と戦える力を持つ者の事です。

ですが、私は【拘束魔法】しか使えず、能力も決して強く有りません。多少の足止めに使える程度の実力です…。」



「拘束魔法…?ふむ。それは見せてもらう事は可能か?ーセネシオ。」


「…畏まりました。」


セネシオは少しだけ笑顔をヒクつかせた。多分、私の魔法封じの腕輪を外すのが嫌なのだ。

だが、ワクワクと目を輝かせている王の命には従わねばならないのだろう。


彼は私に両手を出させて、そこに何かブツブツと呪文を唱えた。

するとカチンッと金属音が鳴り、床にボトッとそれらが落ちた。


その瞬間だ。


「なっ、これは!?」


ジョセフが驚きの声をあげるのも無理は無い。

私がビカビカと光り出したのだから。

やっぱり、あれは夢では無かったのだ。だが、変身をしていない状態でも光っていることは予想外で、私も目をぱちくりとさせてしまう。

自分が眩し過ぎる。


「やはりこうなってしまいましたか。君、魔力が有り余って漏れ出過ぎていますね。」



「「は??」」


私とジョセフの声がハモる。

すると、セネシオは作り笑いから崩し過ぎずに少しだけため息を付くと答えた。


「魔力循環が全く出来ていません。それで良く今まで生きていましたね。」


ニッコリと笑いながら言っているが、さながら魔王の様な黒い笑顔だ。これは、怒っているのか。怖すぎる。


私は何を言われているのか、頑張って噛み砕いた。

つまり、私はずっと大量に魔力を垂れ流していたと?



『それは多分、この子の魔力量が人一倍多いからだわ。』



「イリス!」


私の膝の上がモゾりと動き、顔を持ち上げたイリスが申し訳なさそうに言った。

イリスが起きた事が嬉しくてギュッと抱き締めると、イリスも私をソッと抱き締めた。


『ずっと聞こえていたわ。ごめんなさい…。こんなに魔力が外に流れていたなんて、お供失格ね。私が選んだ子なのに、ちっぽけな魔法しか使えないなんておかしいなと思っていたのに。』



私は首を振って否定の意を表す。

お互い知らなかったのだからしょうがない。

誰も悪くないんだ。


「…感動の再会の中申し訳ない。えっと、そちらはぬいぐるみでは無かったのか?」


ジョセフは唖然としながら私に聞いた。

膝の上に居たもっちりとしたぬいぐるみの様な紫色の猫が、いきなり動いて喋りだしたらそりゃあビックリもするか。説明をすっかり忘れていた。


「とりあえず腕輪から少しだけ魔力が出る様に調節しましょう。眩しくてしかたないので。」


そう言ってセネシオは素早く私に腕輪を取り付けた。

先程とは違い、イリスは起きたままだ。そして、薄らと私の周りに光のベールがかかっていた。


「あ、ありがとうございます。」


「それで、そちらのぬいぐるみは?」


セネシオが素っ気なく言うと、イリスはふわりと浮いて私の頭の上に乗る。


『あら、ぬいぐるみだなんて失礼しちゃうわ。

私はお供妖精のイリス。彼女とはパートナーなの。

この子のコスチュームになって身体能力と魔法の強化及び補助、後はたまのアドバイス担当よ。』


「妖精とな?だが、我らが知る妖精とは違う気がする。コスチュームとはなんだ?」


『そりゃそうね、世界が違うんだもの。コスチュームは魔法少女の服の事よ。魔法少女は特殊な服と妖精の能力を身に纏う事で容姿が変化するの。それを【変身】というのよ。』


「…変身?」


『まぁ、見せた方が早いわね。いいでしょ?』


「あぁ。許可しよう。」


ジョセフが許可したので、イリスが私の方を見て頷く。それに応えるように私も頷いた。

隣は見ないようにしよう。

私は立ち上がると、少し空いたスペースに立つ。


『菖蒲。』


「えぇ。行くよ、イリス。」





「『変身!!』」



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