14 熊は仲間が増えていく
波乱の夜会から数日、アンチェインド・ベアはそれぞれの家族と束の間の団らんを楽しんだ後、さっさと王都を離れた。
夜会で話した令嬢や令息から、彼らの領地を見た上で復興のアドバイスが欲しいという依頼が殺到していたからである。
4人はあちこちの領地に赴き、これまでに培った知恵と力を惜しむことなく提供した。
いつも揃って身につけているアンチェインド・ベアのエンブレムの由来についても、問われれば気軽に答えたので、領地復興に取り組む令嬢・令息の中には、自分も熊でありたいと、4人の了解を得てフィンチ領からエンブレムを取り寄せ、密かに身につける者も出始めた。
取り組みを通して各領地間で広域的な協力関係が生まれ、王都を挟まず物や人が行き来するようになったことで、地方の経済全体も徐々に上向きになりつつある。
それで少し余裕の出来た4人は、あちこちの領地で増え始めた熊仲間の令嬢・令息にも声をかけて、ずっと気にしていた問題を解決するため、ある福祉事業に力を入れ始めた。
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一方、面白くないのは王太子妃ラナである。
夜会で惨めな令嬢達を見て楽しむつもりだったのに、彼女達はこちらが何を言っても蛙の面に小便で、ちっとも張り合いがない。
おまけにラナが主役のはずの夜会で好き放題に振る舞い、他の貴族達の注目まで攫っていった。
癪に触ることに、あの夜彼女らが身につけていた服や装飾が評判を呼び、フィンチの白金細工とウォルコットの染め物は、今や王都の好事家の間でかなりの人気を博しているらしい。
気に食わない。本当に気に食わない。
あれからもう一度あの令嬢達の評判を下げてやろうとあれこれ試みたものの、肝心の当事者が王都に寄りつかないので、嫌がらせをされたとか悪口を言われたと訴える手が使えない。
あの夜、彼女達が貧乏令嬢や令息を集めて領地の復興などとつまらない話で人気とりをしていたことを思い出し、先手を打って王家から施しでもしてやれば、皆手放しでラナに感謝するだろうと思ったのに、ロバートや側近達に助成金交付を提案してみても何だか歯切れが悪いし、国王と王妃には軽はずみな発言はしないようにと注意されてしまった。
こうなったら、もう一度あの4人を夜会に招いて、誰が愛される聖女で、誰が意地悪な脇役なのかをはっきりさせてやるしかない。
今度こそめいっぱい可憐に振る舞って、王都を離れている間に何故か図太くなったらしい彼女らを、「野蛮な悪女」として際立たせてやるのだ。
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というわけでしばらくの後、ヘルガ達のもとにはまたぞろ王都から転送されてきた王家の紋章入りの夜会の招待状が届いていた。
「……『同伴者必須、但し同性の同伴不可』って書いてありますわね」
「ドレスコード『紫色以外』ですって」
「ここまであからさまだといっそ清々しいですね……どうしましょう、もう成婚祝賀会で義理は果たしたから、行かなくていい気もしますけど」
「折角のお招きなんですから、せいぜい私達の方でも利用させてもらいましょうよ。例のプランをお披露目するいい機会じゃないかしら」
アンチェインド・ベアは頷き合った。




