『忘却の都市』 疑念のはじまり
JACの隊長室の扉を勢いよく開け、夏希はまっすぐに歩み寄った。
「——あの二人が、連行されたというのは本当なんですか!?」
怒りにも似たその声が、静かな室内に鋭く響いた。
突然現れた一隊員のそんな乱暴な口調にも、城戸隊長はわずかに視線を上げただけだった。
その揺るがぬ姿に、夏希の肩からわずかに力が抜ける。
自分の声の調子に気づき、唇を噛んだ。
「……すみません。取り乱しました。」
「まずは、座りなさい。」
そう促され、夏希は静かにソファへ腰を下ろす。
夏希が腰を下ろすのを見届け、城戸は静かに口を開いた。
「今、君が聞いた話は——概ね事実だ。」
短く、簡潔に。
「小林副隊長、そして林隊員は……重大な職務違反により身柄を拘束し、しかるべき場所に送った。」
「……っ!」
その言葉に、夏希は呼吸を詰まらせる。
「あの人が……あの小林副隊長が、そんなことを……」
信じられなかった。 信じたくなかった。
「何かの間違いではないのですか?」
感情が先走るように、問いが口から零れる。
城戸は少しだけ表情を曇らせ、そして静かに応じた。
「……私も、そうであってほしかった。」
その口調に、微かな迷いがあった。
「だが、残念ながら——本人たちも自白した。……これは、動かせない事実だ。」
そう言って、城戸は静かに手元のカップを机に置いた。
小さな音が、会話に終止符を打つように響く。
まるで、もうこれ以上語ることはないと告げるようだった。
「……私は……まだ、信じられません。」
絞り出すようにそう呟いた夏希は、静かに席を立つ。
そして。
——私は、自分の足で確かめようと思った。
あの人が本当に“裏切った”のか。——それとも、何かが隠されているのか。




