『忘却の都市』 静寂の外側
10分程前——。
建物内部から複数回の衝突音が響いた。
その音を聞いた夏希は、様子を確認するため、俺に外を任せて建物の中へ向かった。
——今のところ、異常はない。だが、静かすぎる。
住民の避難はすでに完了している。
怪我人は何人か出ているが、幸い死者はいない。
建物内部の様子は分からないが、夏希から忠告を受けていた俺は、その場で待機することを決めた。
その時——。
再び、城戸隊長が現れた。
その姿を見て、すぐに気づく。
——先ほどの5人がいない。
「あの人たちはどうしたんですか?」
静かに尋ねる。
城戸は少し表情を緩め、言った。
「彼らを取り調べしたところ、元々あの集団は陽動だったようだ。我々の動きを読んだ上で、ここ数日、わざと目立つ行動を取っていたらしい。……やられたな。ただ、これ以上、彼らに何か出来るような様子はなかった。その為、巡回させていた別の警備隊員に任せたよ。」
その言葉に、少し安堵する。
俺は短く頷き、隊長へと報告を始める。
「報告が後になり申し訳ございません。住民の避難は完了しました。怪我人は何名かいますが、死者は出ていません。」
城戸は静かに聞いている。
俺は続けた。
「建物入り口は爆破され、そこから昨日の仮面の男と思われる人物が侵入。2名の隊員が追いましたが、先程、建物内部で複数の衝突音発生。確認の為、進藤隊員も10分程前に建物内部に向かいました。」
短く、簡潔に。
城戸隊長は報告を聞き終えると、無言のまま、ゆっくりと建物の入り口へ視線を向けた——。




