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第一章1「この世からの復讐?」

 あれから二年後……。

 なんとか学費を家族間でやり繰りし、僕は高校へと無事に上がった。

 そして、家賃を少しでも節約するために、アパートを借りずに、学園近くのシェアハウスへ引っ越した。

 だが、その選択はすぐに間違いだったと気づかされる。

 その理由は――。


「あっ、義弘よしひろ君の頭に、超巨大なカメムシが!」

「えっ……」


 僕は慌てて頭を触る。

 しかし、自分の髪の感触以外はしなかった。

 すると――。


「ふっふっふ、かかったなアホが……! この隙に……ほっぺにチューしてやるー!」


 同居人に、変な女の子がいるのは大きな誤算だった。

 そのせいで、自分の部屋なのに、プライベートが無い……。

 腰まで伸びた紫紺しこんの髪に、アイドルや女優ですらかすんで見えるほどの美貌びぼう……。

 そして、それらの特徴を見事にぶち壊す残念すぎる性格……。


「はあ……。渡したい物があるって聞いたから仕方なく部屋に入れたけど……。邪魔するなら、出口は向こうだぞ」

「渡したい物は"私の愛"だよ! チュー……」


 口をとがらせて迫ってくる女の子……。

 僕は、そんな彼女の顔面を片手で押さえ、呼吸ができないように彼女の鼻を手の平で押しつぶす。


「んん、んんんん!?」


 すると、面白いくらい暴れてくれる。


「僕は特待生の勉強で忙しいんだ」


 僕は冷たく口にすると、手をどけてあげた。


「ぷへっ……! あー、天国のおばあちゃん見えたよ……」

「危うく人殺しになるところだったのかよ……」

「もうー、義弘君のイジワル! さっさとチューさせろー!」

「絶対に嫌だ」


 この残念美少女の名前は、白石しらいし冬音ふゆねさんだ。

 このシェアハウスの同居人であり、僕が通う学園の同級生でもある。

 なぜか、僕に毎日絡んでくる上に、何をしてくるのか分からないので、すっごく鬱陶うっとうしい……。


 すると、そんな白石さんが――。


「ねえねえ、義弘君って、勉強以外に興味あること無いのー?」

「例えば、どんなだ?」


 逆に僕が質問してやると、彼女は少し答えに詰まった。

 そして――。


「た、例えば、さ……。れ、恋愛、とか……?」

「無い」

「即答じゃん!?」


 恋愛なんてくだらないものは、二年前に封印した。

 それに、今の僕には恋愛なんかよりも、もっと大切な目標がある。

 それが――特待生だ。


「いいか? 僕は特待生の勉強で忙しいんだ。恋愛なんかしてる場合じゃない」

「むー、この絶食系めー……。それに、特待生って、そういうのは三年生から考えるよね? 私たち、まだ一年生だよ?」

「確実に特待生になれるように、今からでも準備しておきたいんだよ」

「なんでそこまで特待生にこだわるの?」


 個人的には答えづらい質問だ……。

 でも、ここで特待生を目指す理由を隠すのも、何か違う気がした。


「貧乏、だからだよ……」

「び、貧乏?」


 白石さんは、首をかしげてしまう。

 なので、僕は説明を加えることにした。


「進学するのに普通、学費ってかかるだろ?」

「確かに、かかるけど……」

「僕の家の経済力では、そんな大金払えないんだよ。だから、特待生になって、学費を免除してもらうんだ」


 僕の家は裕福とはいえない。

 でも、それを理由に進学を諦めたくはなかった。

 今の時代、学歴の差で就職率が大きく違うなんてことは、よくある話だ。

 だから、僕は安定した将来のためにも、どの大学の試験を受けても特待生になれるように努力を惜しまないのだ。


「白石さんも、こんな"貧乏で魅力の無い"僕なんかに時間を無駄にしてないで、もっと自分のために時間を使いなよ」


 自分で言ってて悲しくなってくるが、それが事実なので仕方がない。


 ――だって、自分に魅力が無いのは、二年前の風花が証明してくれたから。


 だから、僕は恋愛なんて不安定な幸せを手にするよりも、もっと確実な方法で幸せをつかむことを選んだのだ

 勉強……。これは、そのための下準備だ。

 必ず、安定した生活を手に入れて、僕は誰よりも幸せになってやる。


 すると、そんな僕に白石さんが――。


「……男の良さは、顔やお金持ちだけじゃないよ」


 僕は寒気がした。


「……っ!?」


 何だろう……。このデジャヴ……。

 僕は今、二年前の風花に言われたことを、そっくりそのまま言われたのだ。


 これは、何かの偶然だと思いたい……。


 一瞬、あのときの喜びや幸せを思い出しかけた。

 だからこそ、僕は心の中でこう思う。


 どうせ……。お前も僕のことを裏切るんだろ……?


 僕は分かっている。女が嘘つきで気まぐれな生き物であることを。

 そんなことは、二年前に痛感したじゃないか……。

 だから、僕は白石さんに目を向けて、全力で拒絶してやろうと思った。

 でも――。


「……」


 不思議なことに、白石さんを見ていて思ってしまった。

 風花とは見た目も性格も違うのに"懐かしい"と。

 そして、そんな彼女がニッコリと微笑みかけてくる。


「ねえ、義弘君」

「な、何?」


 名前を呼ばれて、不覚にもドキリとしてしまう。

 そして、彼女は――。


「天国にいる風花に、復讐ふくしゅうしてみない……?」

「え……」


 白石さんの突然の提案……。

 それを聞いた瞬間、僕の時間が止まった。

 そして、白石さんは更に話を続けてくる。


「私は、風花ちゃんとは違って、義弘君のこと裏切らないよ?」

「な、なぜ、白石さんが、風花の名前を……?」


 彼女は、僕の疑問に答えることなく、更に詰め寄ってくる。

 そして――。


「チュ……」


 頬に直接触れた白石さんのなまめかしい唇の感触……。

 彼女のような美少女に、頬だけとはいえキスされたことに、顔が熱を帯びてしまう。

 すると、そんな僕の反応を見て、白石さんはニヤリと笑うのだった。


「私さ……。義弘君のこと、ずっと昔から良いなって思ってたんだ……」

「な、何だよ、それ……。ち、近づくな……!」

「ふふ、可愛い……」


 目を妖しく細め、舌舐したなめずりしながら体を寄せてくる白石さん。

 動作の一つ一つが現実離れしており、その色っぽさは、甘く危険な香りが濃い……。

 このままでは、彼女に籠絡ろうらくされてしまう……。脳が本能的に警鐘を鳴らしてくる……。

 逃げなければ……。でも、なぜか金縛りにあったように、体が動くことを受け付けない……。


 すると、そんな僕の耳元で、白石さんが――。


「天国にいる風花ちゃんに復讐するために、私のこと……。本物の"彼女"にしてみない……?」

「か、彼女……? 何を言って――」

「大丈夫。義弘君のこと、絶対に幸せにしてあげるよ? 天国にいる風花ちゃんよりもね……。うふふ……」

「し、白石さん……。風花とは、どういう関係なんだ……?」


 僕の質問に、彼女はニヤリと笑いながら――。


「風花ちゃんなんかよりも、私を選んで幸せになろ……? それが風花ちゃんに対する、最高の"復讐"なんだから……」


 僕の質問には答えず、彼女は悪魔のような誘惑をうそぶくのだった。

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 自分の作ったキャラが書籍化されて動いているところを"どーしても!"見てみたいので、よろしければ★マークから評価と、ブックマークの方をよろしくお願いします!

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