プロローグ「あの世からの絶望」
――二年前、三藤義弘は全てを失った。
その"全て"とは、最愛の存在であった幼馴染の風花。
彼女とは、どこにいても一緒だったし、お互いの将来も約束していたほど、誰が見てもラブラブのソレだったのに……。
『落ち込まないで。男の良さは、顔やお金持ちだけじゃないよ!』
これは、風花がよく言ってくれていた言葉だ。
彼女の言葉のおかげで、貧乏で魅力の無い自分でも頑張ろうと思えたし、先の見えない将来にも希望を持てたのだ。
もはや、風花は僕の全てだった。
重い愛だと思われそうだが、それくらい僕を夢中にさせてくれたのだ――"その頃の彼女"は。
そして――。
『俺だって、風花のことが好きだったんだよ!』
僕は、あっけなく奪われてしまった。……自分の"全て"を。
それも、よりにもよって、一番信頼していた友達に。
今でも、アイツらが夢に出てくる……。
そして、僕のことを"貧乏で魅力が無い"と嘲笑ってくるのだ……。
その友達だったヤツの名は、龍弥。
龍弥は、僕なんかとは違い、イケメンで金持ちという完璧を突き詰めたような男だ。
僕とは正反対の位置にいる恵まれた存在……。それが全く嫌味には聞こえなかったのは、友情という盾があったからこそだ。
それなのに、その友情の盾が、裏切りの矛となって僕に向けられるとは、皮肉もいいところだ……。
『ごめんね、ふふ……。やっぱり、男の良さは、顔とお金だよ』
これは、風花が残していった言葉だ……。
彼女の言葉のおかげで、貧乏で魅力の無い自分が嫌になり、先の無い自分の将来が絶望に変わった……。
しかも、それだけではない――。
『現場は凄惨を極めており、乗用車に撥ねられた二人の中学生が死亡し――』
あまりの衝撃で、そこから先のことは覚えていない……。
ただ、記憶の断片として残っているのは、テレビに見覚えのある通りと、見覚えのある"二人の名前"が表示されていたことだった。
結論から言うと――風花と龍弥はデート中に交通事故に遭って、そのまま帰らぬ人となってしまった……。
因果応報というものは恐ろしい……。幸せの絶頂にある二人を、一気に奈落へと突き落としてしまったのだから……。
それに、自分が憎いことに、親しかったあの二人がこの世から消えても、ちっとも悲しい気持ちになんてならなかった。
もちろん、嬉しい気持ちでもなかった。
恐らく、これが"虚無"という感情なのだろう……。
『何が"男の良さは、顔やお金持ちだけじゃない"だ……。僕を一人残して、龍弥と二人で逝きやがって……。この嘘つきが……』
そう。僕は恋も友情すらも運命に奪われてしまったのだ。
人は運命の奴隷、とはよく言ったものだ……。
こうして、全てを失った僕は、心を閉ざしたまま生きていくことになった。
風花が残していった絶望と共に……。
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